東北海道にて名山を求むれば、先づ阿寒嶽は雌雄の二嶽数十町を隔てゝ、東西に対峙す。東は雄阿寒、西は雌阿寒、高さは凡そ五千尺、雌阿寒が少し高し。雄阿寒は孤峯孤立して、満山樹木を帯ぶ。雌阿寒は群峯簇立し、頂上広くして数個の噴火口あり。熾に烟りを噴く。上部は樹木なくして、高山植物に富めり。南側に阿寒富士突起して、完全なる円錐形を成す。雌雄阿寒の間、否、近く雄阿寒に接して、阿寒湖あり。
「北海道山水の大観」(阿寒湖)
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一たびは見むと思ひてあひ見つる雄阿寒の山雌阿寒の山 雌阿寒の火を吹く山に人おほくのぼりて行くにわれは行かぬに |
遊船や阿寒二岳を左右の窓
『年尾句集』(昭和14年)
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