尾花もあとへまねぐと見るに、いつか山根の里、毛呂の碩布が橿寮につきたるなり。洗足に客ぶりをこしらひ、押しならぶに、さらに髪仕たる子の買助てふがいで來て、こゝの家がり來る人は、誰々もみやげせよなどせむるも睦まじ。且つ句あり。はし書は長かりける、
武蔵野に雁をいたはる此のやどり 巣兆
あぢはへてきかす時がらなり。
『そゞろごと』 |
寛政９年（１７９７年）１１月、鈴木道彦、建部巣兆は本庄訪れた。
寛政１０年（１７９８年）７月２３日、盛岡の平角亭を訪れる。８月４日、宮古に赴き、２６日、再び平角亭に戻る。
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曉れは八月十五日なり。きのふはあしのまろ屋に傳ひ入て、鮑魚のなまくさきをいとひけれは、藻家のしたしみを蒙て、桂蘭のかんはしきを弄ふ。
なさけありて情なくて月の宮古嶋
いさよひは夜具もかはるや宮古嶋
『宮古紀行』 |
同年９月、本庄滞在中の小蓑庵長翠は『黒祢宜』を刊行。巣兆跋。
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寛政１２年（１８００年）８月１５日、大江丸は江戸を立ち千住川原町の秋香庵を訪ねた。
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扨おくの国の用事もさむ空に成てはあしからめと、八月十五日雨ふりたれど、江戸をたちて其夜千住の宿にとまる。川原町の秋香庵をたづね侍れバ、名月のあそびする幸の折とて、路川ぬしがいを（ほ）りへ伴ひ、庵主筆をとり大なる幕を画き、めいめい良夜のほ句を書、ひとびと一様に叶の字の手ぬぐひをかぶり秋香巣兆大盃をかたむけて曰、
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まかりいでゝひな助江戸の月見哉
| 巣兆
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夫々といふほどこそあれ、せいろうそば切山の如く席もせましとつミあげしかバ、
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御出やつた月のかほミせ手打そば
| 大江
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享和元年（１８０１年）、信州飯田に滞在。
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秋香庵は飯田にあそびて、朱樹叟の客中をとぶらふ文
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寄添て又火を焚やころもがへ
| 巣兆
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樹を伐て夜に入宿や更衣
| 蕉雨
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享和２年（１８０２年）１月、巣兆は上方に旅をする。『せき屋でう』
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文化元年（１８０４年）２月２５日、小林一茶は乙二、道彦と巣兆婦人の見舞いに千住へ行く。
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廿五日 晴 北風吹
巣兆ノ婦人例ならぬとて、乙二、道彦とおなじく千住におもぶく。かへるさ穏（隠）坊の家をよ所に見なして、
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わか草や誰身の上の夕けぶり
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わか草と見るもつらしや夕けぶり
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文化元年（１８０４年）、『はたけせり』（乙二編）刊。巣兆序。
文化２年（１８０５年）３月２日、巣兆は本所相生町に一茶を訪れる。
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二日 晴 巣兆来 文国来
『文化句帖』（文化２年３月） |
文化５年（１８０８年）６月１４日、一茶は流山に行く途中で巣兆を訪れ、昼食。
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十四日、晴 熱田明神の祭有、千住秋香庵中飯。小菅村水戸橋ふしん、舟渡し。新宿より高須村といふ所に堤有、去卯六月三日洪水に破れて、新堤によし簀引はりて餅など売有。足を休。
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六月や草も時めくわらじ（ぢ）茶屋
泣堀通流山ニ入
『文化五年六月句日記』 |
文化６年（１８０９年）、『玉の春』（巣兆編）刊。
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文化７年（１８１０年）、巣兆の五十賀。
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巣兆五十賀
柴の戸やかすむたそくの角田鶴
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文化８年（１８１１年）１１月２８日、一茶は巣兆を訪ねて千住を訪れている。
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廿八 晴 卯中刻千住行 房州ヨリ画タノミ来ル故也
『七番日記』（文化８年１１月） |
同年『俳諧道中双六』下総香取の太キョウの序、秋香庵巣兆の挿絵。
文化９年（１８１２年）７月、五翁・角浪・可良久・五渡・五楼は妻沼に聖天山歓喜院に芭蕉の句碑「稲妻塚」を建立。
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稲津ま也闇のかた行五位の聲
碑陰に巣兆の撰文がある。
巣兆は妻沼を訪れている。
妻沼にて
五月雨やまくら借たる桑の奥
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文化１１年（１８１４年）１１月１７日、巣兆は５４歳で没。
哭二巣兆一
三十余年の旧交、たゞ一時のあだことゝなりてながき恨をいだく。書畫の雅名も今朝一片のけぶりとともにあとかたなし。
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なにごともひとつ殘らず霜の草
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浅草の日輪寺に葬られた。
哀に悲しきは、またふる年にかはらざりければ、巣兆仏がたぶけに
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