一茶の交友～井上杉長～

俳　人

井上杉長

井上良珉。採荼庵二世平山梅人の門人。瓢庵。松平定信の侍医。

『俳人住所録』（文政４年）に「杉長　久保村　井上良民」とある。

　明和７年（１７７０年）、朝夷郡久保村（現：南房総市千倉町久保）に生まれる。

　享和３年（１８０３年）、梅人三回忌集『水の音』刊。

　文化４年（１８０７年）、梅人七回忌に『梅人句集』（郁賀・杉長編）刊。

　文化１２年（１８１５年）１１月２７日、一茶は久保村へ。

仁王門

［廿］七　晴　久保ニ入　夜少雪　　補陀洛山那古寺

『七番日記』（文化１２年１１月）

　文化１４年（１８１７年）４月２９日、一茶は再び久保村へ。

［廿］九　晴　久保ニ入

『七番日記』（文化１４年４月）

杉長の瓢庵で俳諧之連歌。

我汝をまつことひさし杜宇	一茶

廿九日のけふも四ン月	杉長

汐担荷のとろりと井ふ風いて	ゝ

茶をのめのめと板またくなり	茶

　文化１４年（１８１７年）１０月２６日、半場里丸瓢庵で俳諧。

房州於瓢庵興行

帰リ花咲てついそれそこにあり	杉長

玄猪に来ても三夜さ二夜さ	里丸

	『里丸句稿』

　文政２年（１８１９年）３月、半場里丸は瓢庵で三吟。

文政二弥生	於瓢庵三吟興行

漉し水も間に合兼し桜哉	杉長興行

みちか袴の裾の陽炎	里丸興行

ちゝめきの折々並ふ春旧りて	平雄

	『里丸句稿』

　文政６年（１８２３年）、松平家の移封に従って伊勢の桑名に赴く。

文政１１年（１８２８年）２月１９日、桑名で没。享年５９歳。

南房総市千倉町の雲龍寺に杉長の墓があるそうだ。

天保４年（１８３３年）、「杉長墳」建立。

杉長の句

行ものは水に限らし蝸牛

『揺松集』

寂しをり我にお（を）しへて鳴け蛙

『水の音』

いかやうな桜にもなく烏かな

『くさかね集』

たれをたが待乳沈んで入梅ふかし

竹植に来た顔で啼雀かな

『玉の春』

喰ふ（う）て寝る身にさへ春と思ふ哉

親の夢旅寝の盆もしてとりぬ

『物見塚記』

正月も日暮のありて杖の先

『随斎筆記』

花ならば捨て咲せよ鱠皿

『名なし草紙』

抹香のこぼれては咲すみれ哉

『なにぶくろ』

小初瀬の桃にも雲のかゝる哉

大礒や小磯の波も卯月めく

『世美冢』

みのかけて田植ちかしや川柳

『青かげ』

埒なしに長閑なりけり山畠

『三韓人』

むら落葉汐みち来れば又ひけば

『杖の竹』

大いそや小磯の波も卯月めく

『的申集』

これといふ花もなけれど背戸の山

笹の葉のさゝやきやうも四月哉

『俳諧西歌仙』

心うくうれし霜にも花が咲

咲せたし見たし葵は開くれに

『信濃ぶり』

置土のおちつく四月なかばかな

『春秋稿』（第八編）

約束をしては見られす霜の花

『わすれす山』

帰花さても人はと思ふなり

『杉間集』

鶏頭と我夜や明て又暮る

『たねおろし』

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