金毘羅の神前におゐて男女ともに名をつく事いにしへより今にその例たかはす。左の句そのかミより宝前にありてよみひとしれす、今此集の初にことふく。
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大方は神のゑほし子金毘羅會
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| 大坂
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馬に乗衣かつきあり金毘羅會
| 才麿
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| 同
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呉服所のあれハ誰やらこんひら會
| その女
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時も社あれ再行脚のけふしも會日にあひ侍りしか、例の雅友寸木子奉納の集をえらひし。野子も数に入てよとそゝのかすぬさ心のうれしさに
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| 鴫立沢
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作り初花よもみちよ金毘羅會
| 三千風
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| 大坂
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しくれけり今夜は聞し箸洗ひ
| 諷竹
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| 京
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橋廊に袖をひかれな金毘羅會
| 泥足
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| 大坂
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しうとめも嫁も出たり金毘羅會
| 清流
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| コンヒラ
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女子気やはたしの行て金毘羅會
| 寸木
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時雨
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柴の戸やしくれた跡の雲の減
| 丈艸
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| 越中
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散雲の下ハ沙汰なきしくれかな
| 林紅
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| カゝ
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橋板のかれ野に立やうき柱
| 北枝
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路通下向に対して
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月雪や見る不自由さもさはいひつ
| 雲鹿
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松の葉の葛屋に立や霜の朝
| 正秀
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| 越中
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水風呂の夜になる初のミそれかな
| 浪化
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| 豊後
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花ならぬ落葉に何をなめくしり
| 朱拙
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鳥 魚
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夕くれや烏もふたつ池の鴛
| 言水
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すまのうらにて
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夜すからをとちらへ寝ても千鳥哉
| 芳水
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寒 火燵 炭 榾 薬喰
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| 尼
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うら風に松はひとりのさむさかな
| 智月
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鉢 叩
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翁の寐さめ申されけるあかつきのはちたゝきを
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きゝて
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| 江戸
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いますこしとし寄見たし鉢たゝき
| 嵐雪
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| 嵯峨田夫
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瓢箪に打ツこたへツ鉢たゝき
| 為有
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雑 冬
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| 備中
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うつくしきたくひも見えす冬の山
| 露堂
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| 加賀
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爐の縁をめくりてゐるか冬の蠅
| 句空
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春之部
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納豆と梅のはなとハにほひかな
| 支考
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若 菜 若屮
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| 江戸
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七くさにはやさゝやくやぬけまいり
| 其角
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野寺をとふらふ
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弟子の手にかけぬ仏の若菜哉
| 露川
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鳥 魚 貝
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うくひすの声をそめけり藍畠
| 酒堂
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うくひすの足にやこハき松の肌
| 除風
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三日月をふまへて落る雲雀かな
| 三千風
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青麦や雲雀かあかるありやさかる
| 佛兄
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とうよくなさむさや花も咲きらす
| 野紅
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柳
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人込の中へしたるゝ柳かな
| 浪化
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やまさくら取つくろはぬ一重かな
| 林女
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春 月
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たのしさよ闇のあけくの朧月
| 去來
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雑 春
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出来過す麦の薬や春の霜
| 正秀
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献立にたらぬものあり春の雨
| 北枝
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正秀東武餞別
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はる駒にしめて乘よき手綱哉
| 智月
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行脚のころほひ
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しつかさや嵯峨にやたまる春の雨
| 諷竹
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夏之部
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伊勢にて
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うのはなも海のかさりや浅熊山
| 去來
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端 牛(ママ)
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| 江戸
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あやめくさ加茂のかり橋今幾日
| 嵐雪
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瓜
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ふりの皮むいたところや蓮臺野
| 芭蕉
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| 阿波
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しうとめの付聲をする田哥かな
| 一吟
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ふらつきの仕合になるすゝみかな
| 野紅
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すゝしさを見せてうこくや城の松
| 丈屮
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五月雨 白雨
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小町塚にて
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さみたれや膚にとゝく塚の底
| 青流
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夕立を根から吹ぬくあらしかな
| 十丈
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つくしへまかりけるとき伏見の舟中より都に侍
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る子とものかたを帰りミて
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夕立の雲もかゝらす留主の空
| 去來
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蚊 蚤
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朝日さす紙帳の中や蚊の迷ひ
| 丈屮
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宵の口鳴てくもるや水札水鶏(はんくいな) | 北枝
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囀りも畧して夏の小鳥かな
| 浪化
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秋之部
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ほし合や寺ハ坊主の蚊屋隣
| 丈艸
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あさかほハ下手の畫(カク)さへあハれ也
| はせを
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八朔
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| ミノ
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八朔や秋をふるはす風の音
| 千川
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かゝる夜の月に夢見る人ハうしといさなハれつ
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仕こしらへとりもあへすに船の月
| その女
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ことし正月のけふ子にをくれて
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| 伊丹
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此秋ハ膝に子のない月見かな
| 佛兄
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病中吟
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おもひ出す人の多さよけふの月
| 諷竹
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名月や三年ふりに如意か嶽
| 去來
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十五夜の月のひらきや前後
| 去來
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浅水の橋をわたるとき俗あさうつといふ清少納
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言のはしハとあり。一条あさむつのとかける所
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也
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あさむつや月見の旅の明はなれ
| 芭蕉
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鳥 虫
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夕風の引捨をなくうつらかな
| 浪化
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紅葉 鹿
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もえてくれ紅葉の枝に小折なし
| 秋之坊
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さる沢の池のほとりにて
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ひいと鳴尻声かなし夜の鹿
| 芭蕉
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此道やゆく人なしに秋のくれ
| 芭蕉
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