俳 人

鶴 老

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 下総国相馬郡籠山(こもりやま)西林寺第64世義鳳師。飯田の出身で、桜井蕉雨と同郷。

『俳人住所録』(文政4年)に「鶴老 相馬守谷 西林寺」とある。

籠山西林寺


 文化7年(1810年)6月14日、小林一茶は蕉雨とともに初めて鶴老を訪ねた。

一茶48歳の時である。

 十四 晴 布施村中食す。守谷西林寺入。将門旧迹所々に有。

『七番日記』(文化7年6月)

 同年12月21日、一茶は流山に2泊して、23日、蕉雨に紹介された鶴老を訪ねて守谷西林寺に入る。

   廿三日 西林寺に入

行としや空の名残を守谷迄

行としや身はならはしの古艸履

古頭巾やとりも直さぬ貧乏神

『七番日記』(文化7年12月)

西林寺に句碑がある。

一茶の句碑


行くとしや空の名残りを守谷まで

一茶と鶴老の連句がある。

去十二月廿三日

行としや空の青さに守谷迄
   一茶

寒が入やら松の折れ口
   鶴老


 この年の11月2日、夏目成美の留守宅を訪れたところ、金子が紛失して一茶も8日まで留め置かれるという事件があった。

   二 曇 申九刻随斎ニ入。主人角田川ノ紅葉一覧。

   三 晴 卯五刻箱中改メラルゝ所金子紛失ス。

『七番日記』(文化7年11月)

守谷で年を越す。

   一 大風 晴

我春も上々吉よ梅の花

『七番日記』(文化8年正月)

『我春集』に鶴老の句が収録されている。

   文化八年正月一日


初空や不二も埃のたゝぬうち
   鶴老

はつ空や是にもほしき時鳥(ほととぎす)
   (ゝ)


1月7日、竹里がやってきた。

   七 晴 竹里来

『七番日記』(文化8年正月)

一茶は13日まで逗留して流山へ。

 文化9年(1812年)1月23日、一茶は布川から守谷の西林寺に入る。

   賀治世

松陰に寝てくふ六十よ(余)州哉
   一茶

   鶴と遊ん亀とあそばん
   鶴老


「松陰」は、松平氏(徳川家)の恩沢。「六十よ州」は、日本全国。

一茶の句の碑が信濃町の諏訪神社にある。

一茶の句碑


松蔭に寐て喰ふ六十餘州かな

 同年2月12日、守谷を後にして流山に向かう途中、一茶は秋元双樹紅竜山東海寺(布施弁天)詣でた。

 文化11年(1814年)8月18日、一茶は流山から守谷に入る。

   十六 晴 夜雨 流山ニ入

   十八 晴 守谷ニ入

   廿八 晴 布川ニ入

『七番日記』(文化11年8月)

一茶と鶴老の両吟がある。

世につれて花火の玉の大きさよ
   一茶

   舟にめしたる十六夜の月
   鶴老

『株番』

『七番日記』(文化11年7月)には「世につれて花火の玉も大きいぞ」とある。

28日、一茶は守谷から布川へ。

 文化12年(1815年)10月4日、一茶は東叡山中観成院に鶴老を訪ねるが会えなかったようだ。

 四 晴 鶴老ノ旅宿東叡山中観成院ヲ訪不逢 松井ニ入

『七番日記』(文化12年10月)

観成院は「東叡山(寛永寺)36坊」と呼ばれた子院の1つ。

一茶は松井へ。

 文化13年(1814年)10月9日、一茶は西林寺に入り、ここで芭蕉忌を迎えた。

   九 晴 入西林寺

   [十]二 雨 翁忌

翁忌や何やらしやべる門雀

『七番日記』(文化13年10月)

同年12月22日、籠山(こもりやま)の西林寺に入る。

   [廿]二 晴 大西風 寒 入篭山

『七番日記』(文化13年12月)

西林寺で年を越す。

我菴は昼過からが元日ぞ

文化14年(1817年)1月24日まで滞在。

   [廿]四 晴 大北風吹 マバシニ入

『七番日記』(文化14年正月)

 文化14年(1817年)2月5日、一茶は馬橋からが守谷を訪れる。

   五 晴 入化六庵。蕉雨妻病ニヨリテ也。

『七番日記』(文化14年2月)

化六庵は鶴老上人の号。

これが最後の訪れである。

2月10日、一茶は鶴老上人と大鹿村で別れ、布川に行く。

これが鶴老上人と今生の別れとなった。

 文化14年(1817年)8月24日、国学者高田与清は守谷を訪れ、鶴老上人・斎藤若雨に会っている。

今宵は文伯が家にやどる。鶴老師・齋藤氏相ぐしておはしたれば、よもすがら宇治大納言物語のこうぜちして人々丑の四などいふころにねぬ。


晩年、取手市野々井の長福寺に隠居。

天保4年(1833年)3月13日、長福寺で寂。

鶴老の句

秋もはら木間木間の小家哉

『文化句帖』(文化3年正月)

焼飯の松葉臭さよ今朝の雪


かれえだにかゝらむとして秋の雲


踊れ踊れ聟になるまで月夜まで


花鳥の数に置たき生海鼠(なまこ)


猿橋ふみしめるころは、たゞならぬ寒さなりけり。

甲斐がねや江戸で見て来し秋の雲


とべ螢頼む木影もある物を


石臼も露とちるべき草屋哉


苗代に玉のやうなる月夜かな


一時雨鴫もはこふや朝の中


ひともとの花をうつして涼み哉


雀とは知れと小寒し木下闇


木の間から人の来にけり春の雨


芦原や子心にさへ星をまつ


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