蕉 門
己白
ところどころ見めぐりて、洛に暫く旅ねせしほど、みのゝ国よりたびたび消息有て、桑門己百のぬしみちしるべせむとて、とぶらひ来侍りて |
しるべして見せばやみのゝ田植哥 | 己百 |
笠あらためむ不破のさみだれ | ばせを(う) |
其草庵に日比ありて | |
やどりせむあかざの杖になる日まで |
どこまでも武蔵野の月影涼し | 寸木 |
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水相にたり三またの夏 | 芭蕉 |
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海老喰ひにむれゐる鳥の名を問て | 荷兮 |
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ゑぼし着ぬ日のさらに楽也 | 越人 |
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懐を明てうけたる山ざくら | 落梧 |
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蝶狂ひ落欄干のまへ | 秋芳 |
貞享三(五)戌辰林鐘十九日 |
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於岐阜興行 |
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蓮池の中に藻の花まじりけり | 芦文 |
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水おもしろく見ゆるかるの子 | 荷兮 |
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さゞ波やけふは火とぼす暮待て | 芭蕉 |
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肝のつぶるゝ月の大きさ | 越人 |
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苅萱に道つけ人の通るほど | 惟然 |
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鹿うつ小屋の昼はさびしき | 炊玉 |
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真鉄ふくけぶりは空に細々と | 落梧 |
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かし立岨の風のよめふり | 蕉笠 |
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古寺の瓦葺たる軒あれて | 己百 |
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夜る夜るちぎる盗人のつま | 梅餌 |
濃の已百おもひかけぬ盲目となれ
はそれをさへ哀に聞侍るに |
行あたる壁にもさそなけふの月 | 已百 |
元禄11年(1698年)11月1日、55歳で没。 己百の句 俳 人に戻る ![]() |