蕉　門～小杉一笑

蕉　門

小杉一笑

加賀金沢の茶商。通称は茶屋新七。

一笑　加州金澤片町、茶屋新七、翁行脚三年先二死ス。塚も動け我泣聲は秋の風　翁

元禄元年（１６８８年）１２月６日、３６歳で没。

一、加刕金沢の一笑は、ことに俳諧にふけりし者也。翁行脚の程、お宿申さんとて、遠く心ざしをはこびけるに、年有て重労の床にうち臥シければ、命のきはもおもひとりたるに、父の十三回にあたりて、哥仙の俳諧を十三巻、孝養にとて思ひ立けるを、人々とゞめて、息もさだまらず、此願のみちぬべき程には、其身いかゞあらんなど気づかひけるに、死スとも悔なかるべしとて、五哥仙出来ぬれば、早筆とるもかなはず成にけるを、呼（かたいき）に成ても猶やまず、八巻ことなく満ン足して、これを我肌にかけてこそ、さらに思ひ残せることなしと、悦びの眉重くふさがりて、

心から雪うつくしや西の雲

　　　一笑

『雑談集』

金沢の願念寺に「一笑塚」がある。

心から雪うつくしや西の雲

　元禄２年（１６８９年）７月、芭蕉は金沢に入り一笑が前年に死去したことを知り慟哭、２２日の追悼会でその悲しみを「塚も動け我泣く声は秋の風」と詠んだ。

　金沢に来て、芭蕉は一笑の死を聞いた。芭蕉に会いたがっていた一笑が、自分の来るのを待たず死んだのだ。芭蕉は、自分よりも十歳若い一笑の死を痛恨した。追善の句

　　　塚も動け我泣声は秋の風

　「我泣声は」の「は」は強調。「我泣声即秋風」逆に「秋風即我泣声」である。

　即秋風である我泣声に、塚も動けよ。と云ったのだ。

　一笑の家は片町にあった。いまで云えば、繁華街の香林坊から犀川大橋へ行く電車通の町、それに隣接する河原町に芭蕉の宿があった。一笑の家・小杉家の菩提寺の願念寺も同じ河原町にあったから、そこで行われた追善句会へは宿から直ぐ行けた。

「金　沢」

願念寺門前に芭蕉の句碑がある。