芭蕉の句
月はやし梢は雨を持ながら
ひるよりあめしきりにふりて、月見るべくもあらず。ふもとに、根本寺のさきの和尚、今は世をのがれて、此所におはしけるといふを聞て、尋入てふしぬ。すこぶる人をして深省を發せしむと吟じけむ、しばらく清浄の心をうるにゝたり。 あかつきのそら、いさゝかはれけるを、和尚起し驚シ侍れば、人々起出ぬ。月のひかり、雨の音、たヾあはれなるけしきのみむねにみちて、いふべきことの葉もなし。はるばると月みにきたるかひなきこそ、ほゐなきわざなれ。かの何がしの女すら、郭公の歌得よまでかへりわづらひしも、我ためにはよき荷憺の人ならむかし。 |
をりをりにかはらぬ空の月かげも |
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ちヾのながめは雲のまにまに | 和尚 |
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月はやし梢は雨を持ながら | 同 |
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寺に寝てまこと顔なる月見哉 | 同 |
「根本寺のさきの和尚、今は世をのがれて、此所におはしける」のは鉾田市阿玉の大儀寺であるともいう。 |
茨城県鹿嶋市の根本寺 千葉県市川市の行徳街道 岡山県井原市の両山寺 山口県萩市の大照院 徳島県阿南市の津峯神社に句碑がある。 |
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