芭蕉の句
さまざまのこと思ひ出す櫻哉
伊賀の國阿波の庄といふ所に、俊乗上人の旧跡有。護峰山新大仏寺とかや云、名ばかりは千歳の形見となりて、伽藍は破れて礎を残し、坊舎は絶えて田畑と名の替り、丈六の尊像は苔の緑に埋て、御ぐしのみ現前とおがまれさせ給ふに、聖人の御影はいまだ全おはしまし侍るぞ、其代の名残うたがふ所なく、泪こぼるゝ計也。石の連(蓮)台・獅子の座などは、蓬・葎の上に堆ク、双林の枯たる跡も、まのあたりにこそ覺えられけれ。 |
丈六にかげろふ高し石の上 |
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さまざまのこと思ひ出す櫻哉 |
おなじ年の春にや侍らむ。故主君蝉吟公の庭前にて |
さまざまの事おもひ出す桜かな | 芭蕉 |
探丸子別墅の花見催ほし給ひけるに、まかり給ひて、 様々のこと思ひ出す櫻かな |
愚按、良長成人の後、別號を探丸といふ。蕉翁が宗房たりし時の忠節をおぼし出で、初めて對面ありし時とぞ。この句に探丸の脇の句あり。春の日早く筆にくれゆく云々。翁の執筆にて一坐あり。其の筆のあと今に傳はれりとぞ。 |
藤探丸子(蝉吟子嗣子良長)のもとにて、 さまさまの事おもひ出すさくら哉 春の日はやく筆に暮ゆく 探丸子 |
茨城県龍ヶ崎市の松葉小学校 埼玉県羽生市の円照寺 東京都八王子市の八幡神社 新潟県新潟市の三柱神社 福井県敦賀市の敦賀気比高校 愛知県岡崎市の甲山中学校 三重県伊賀市の上野公園 兵庫県高砂市の播州山頭火句碑の園、南あわじ市の賀集八幡宮 岡山県岡山市の路上、普門院 愛媛県松山市の阿沼美神社に句碑がある。 |
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