芭蕉の句
鞍つぼに小坊主乗るや大根ひき
頃日漸寒に至り候而、少し云捨など申ちらし候。 鞍つぼに小坊主乗ルや大根挽キ 振売の雁哀也夷講 |
文鳥子元服之よし目出度存候。愈成長たるべく候。 千川子瘧(おこり)久々御煩、いまほどは御快然珍重存候。 頃日愚句 金屏の松の古さよ冬籠り 鞍つぼに小坊主乗るや大根ひき 寒菊や醴(あまざけ)造る窓の前 素堂菊宴 菊の香や庭に切たれ(る)沓の底 |
鞍坪(壷)に小坊主のるや大根引 | ばせを |
蘭国曰、「此句、いかなる処か面白き」。去来曰、「吾子今マ(ママ)解しがたからん。只、図してしらるべし。たとへば、花を図するに、奇山・幽谷・霊社・古寺・禁闕によらば、その図よからん。
よきがゆへ(ゑ)に古来おほし。如此の類は図の悪敷にはあらず。不珍なれば取はやさず。
又、図となして、かたちこのましからぬものあらん。此等、元より図あしとて用ひられず。今珍らしく雅ナル図アラバ、此を画となしてもよからん。句となしてもよからん。されば、大根引の傍に草はむ馬の首うちさげたらん、鞍坪(壷)に小坊主のちよつこりと乗りたる図あらば、古からんや、拙なからんや、察しらるべし」。国が兄何某、却て国より感驚ス。かれは俳諧をしらずといへども、画を能するゆへ(ゑ)也。図師尚景が子也。 |
鞍つほに小坊主のるや大根引 此句、師のいはく「のるや大根引」と小坊主のよく目に立つ処、句作ありとなり。
『三冊子』(土芳著) |
栃木県真岡市の出世稲荷神社 石川県志賀町の里本江の旧家 兵庫県洲本市の内田神社 鹿児島県出水市の出水市立図書館に句碑がある。 |