芭蕉の句
清滝や波にちり込青松葉
九日 |
服用の後、支考にむきて、此事は去来にもかたりを(お)きけるが、此度嵯峨にてし侍る、大井川のほつ句おぼへ(え)侍るかと申されしを、あと答へて、 |
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大井川浪に塵なし夏の月 |
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と吟じ申しければ、その句園女が白菊の塵にまぎらはし。是もなき跡の妄執とおもへば、なしかへ侍るとて、 |
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清滝や波にちり込青松葉 翁 |
清滝や浪にちりなき夏の月 | ばせを |
先師、難波の病床に予を召て曰、「頃日(このごろ)園女が方にて、「しら菊の目にたてゝ見る塵もなし」と作す。過し比ノ句に似たれば、清滝の句を案じかえ(へ)たり。初の草稿、野明がかたに有らん。取てやぶるべし」と也。然ども、はや集々にもれ出侍れば、すつるに及ばず。名人の、句に心を用ひ給ふ事しらるべし。 |
大井川波に塵なし夏の月 清瀧や波に塵なし夏の月 清瀧の水汲寄てところてむ 清瀧や波にちりこむ青松葉 蓼云、この句は祖翁難波の病床に去来をめして「此程園女亭にて「しら菊の目にたてゝ見る塵もなし」と云る句にこゝろかよひて亡執のひとつなり」とて青松葉に吟しかへ給ふよし、去来集に見へたり |
群馬県沼田市の「まちこ茶屋」 千葉県我孫子市の滝前不動尊 福井県大野市の清瀧神社 京都府京都市の清滝 高知県土佐市の清滝寺に句碑がある。 |