芭蕉の句
馬ぼくぼく我を絵に見る夏野かな
笠着て馬に乗りたる坊主は、いづれの境より出でて、何をむさぼり歩くにや。このぬしの言へる、これは予が旅の姿を写せりとかや。さればこそ、三界流浪の桃尻、落ちてあやまちすることなかれ。 |
『泊船集』には「馬ぼくぼく我を繪に見る枯野かな」とある。 |
『俳諧一葉集』には「夏馬ほくほく我を繪に見るこゝろ哉」とある。 |
甲斐の郡内といふ處に至る、途中の苦吟 夏馬ほくほく我を繪に見るこゝろ哉
『俳諧一葉集』 |
また、『俳諧一葉集』では「考證」として「馬ほくほく我を繪に見る枯野哉」を挙げ、「はしめは夏野と云吟なれど、一直有しにや。猶畫讃とあれば、訂正の為爰に擧。」とある。 『三冊子』(土芳著)に此句、はじめは「夏馬ぼくぼく我を繪に見る心かな」と有。後直る也。とある。 |
天和2年(1682年)12月28日、江戸の大火により芭蕉庵焼失。翌天和3年(1683年)1月、芭蕉は高山麋塒の招きに応じて来峡し、約半年間この甲州谷村の地に滞在した。 |