旅のあれこれ文 学


『新勅撰和歌集』

第九番目の勅撰和歌集。十三代集の最初。

 貞永元年(1232年)後堀河天皇から勅命を受け、文暦元年(1234年)に藤原定家が撰定した歌集。約1,400首収録。

新勅撰和歌集 巻第一 春歌上

   題しらず
よみ人しらず
ふゆすぎてはるはきぬらしあさひさすかすがのやまにかすみたなびく

ひさかたのあまのかぐやまこのゆふべかすみたなびくはるたつらしも

前参議親隆
松しまやをじまがさきのゆふがすみたなびきわたせあまのたくなは

新勅撰和歌集 巻第二 春歌

   関路花

あふさかのせきふみならすかちびとのわたれどぬれぬはなのしらなみ

新勅撰和歌集 巻第三 夏歌

従二位家隆
かぜそよぐならのをがはのゆふぐれはみそぎぞなつのしるしなりける

新勅撰和歌集 巻第五 秋歌下

   九月十三夜の月をひとりなかめておもひいで侍ける
能因法師
さらしなやおばすてやまに旅ねしてこよひの月をむかし見しかな

新勅撰和歌集 巻第六 冬歌

   題しらず
西行法師
かぜさえてよすればやがてこほりつゝかへるなみなきしがのからさき

新勅撰和歌集 巻第八 羈旅歌

   題しらず
世中はつねにもがもなゝぎさこぐあまのをぶねのつなでかなしも

新勅撰和歌集 巻第十一 恋歌一

   和泉式部につかはしける
大宰帥敦道親王
うちいでゞもありにしものをなかなかにくるしきまでもなげくけふかな

   返し
和泉式部
けふのまのこゝろにかへておもひやれながめつゝのみすぐす月日を

みるめかるあまのゆきゝのみなとぢになこそのせきもわがすゑなくに

   題しらず
あづまぢやしのぶのさとにやすらひてなこそのせきをこえぞわづらふ

新勅撰和歌集 巻第十三 恋歌三

   あしたにつかはしける
大宰帥敦道親王
こひといへばよのつねのとやおもふらんけさのこゝろはたぐひだになし

   返し
よのつねのことゝもさらにおもほえずはじめてものをおもふ身なれば

   建保六年内裏歌合、恋歌
前内大臣
まつしまやわが身のかたにやくしほのけぶりのすゑをとふ人も哉

権中納言定家
こぬひとをまつほのうらのゆふなぎにやくやもしほの身もこがれつゝ

   内大臣に侍ける時、家に百首歌よみ侍けるに、名所
   恋といふこゝろを
前関白
わくらばにあふさかやまのさねかずらくるをたえずとたれかたのまん

権中納言定家
くるゝ夜は衛じのたくひをそれと見よむろのやしまもみやこならねば

新勅撰和歌集 巻第十四 恋歌四

額田王
きみまつとわがこひをればわがやどのすだれうごかしあきのかぜふく

新勅撰和歌集 巻第十六 雑歌一

   落花をよみ侍ける
入道前太政大臣
はなさそふあらしのにはのゆきならでふりゆくものはわが身なりけり

新勅撰和歌集 巻第十七 雑歌二

   ひとりおもひをのべ侍けるうた
鎌倉右大臣
やまはさけうみはあせなん世なりともきみにふたごゝろわがあらめやも

新勅撰和歌集 巻第十九 雑歌四

   布引滝をよめる
藤原行能
ぬのびきのたきのしらいとわくらばにとひくるひともいくよへぬらむ

よみ人しらず
かつしかのまゝのうらまをこぐふねのふな人さは(わ)ぐなみたつらしも

前大僧正慈円
かつしかやむかしのまゝのつぎはしをわすれずわたるはるがすみ哉

   ひたちにまかりてよみ侍ける
能因法師
よそにのみおもひを(お)こせしつくばねのみねのしら雲けふ見つるかな

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