旅のあれこれ文 学


富安風生ゆかりの地

富安風生の句碑 ・ 富安風生の句

 本名謙次。高浜虚子に師事。『若葉』主宰。

 明治18年(1885年)4月16日、愛知県八名郡金沢村(現:豊川市金沢町)に生まれる。

 大正7年(1918年)6月、福岡貯金支局長として赴任。吉岡禅寺洞に俳句の手引きを受ける。

 大正8年(1919年)5月、本省に転勤、為替貯金局庶務課長となる。

 大正11年(1922年)、水原秋桜子山口誓子山口青邨高野素十らと東大俳句会を結成。

 大正12年(1923年)6月、風生は渡欧を命ぜらる。

六月二十八日。富安風生渡欧送別東大俳句会。発行所。会者、泊
雲、たけし、貫峰、紫雲郎、誓子、坤者、筍孫、未知、菫、刀葉、
秋櫻子等。

 日覆に松の落葉の生れけり

 日覆の松の落葉を仰ぎけり


 昭和4年(1929年)、「ホトトギス」同人となる。

 昭和10年(1935年)6月2日、高浜虚子は武蔵野探勝会で横須賀軍港へ。山口青邨・富安風生等同行。

 昭和11年(1936年)1月11日、逓信次官に任ぜられる。4月、麹町区永田町の逓信次官官舎に転居。7月18日、高浜虚子は逓信次官官舎に富安風生を訪ねている。

七月十八日 風生招宴。麹町永田町、逓信次官々邸。

 籐椅子にあれば草木花鳥来

 我が前に夏木夏草動き来る


 昭和11年(1936年)8月2日、高浜虚子は武蔵野探勝会で旧渋沢邸を訪れる。富安風生等同行。

 昭和11年(1936年)9月6日、高浜虚子は武蔵野探勝会で成田山へ。富安風生等同行。

 昭和12年(1937年)5月、逓信次官を退職。

 昭和22年(1947年)7月1日、富安風生は小諸の疎開先に高浜虚子を訪ねた。

 昭和23年(1948年)、蕪村の句碑を建立。富安風生書。

 昭和24年(1949年)1月11日、高畑重幸は高畑邸(六茶庵)に全国で最初に風生の句碑を建立。

 昭和41年(1966年)、『大野伴睦句集』刊。富安風生序。

九十五齢とは後生極楽春の風

『走馬燈』

昭和54年(1979年)2月22日、94歳で没。

   富安風生氏を悼む

水鳥の水尾の静かに広かりし



昭和54年(1979年)、清崎敏郎は若葉主宰を継承。

昭和57年(1982年)、『走馬燈』刊。

クラーク像

北海道大学(北海道札幌市)

天柱を樹てて左右に二瀑落つ

流星・銀河の滝(北海道上川郡上川町)

車前草に蹄痕ふかし五稜郭

五稜郭(北海道函館市)

柾を葺く仮宮かなし小町草

善知鳥神社(青森県青森市)

長き夜の書にも遠野物語

遠野駅(岩手県遠野市)

鞘堂を被て道ばたに古碑小春

壺碑(宮城県多賀城市)

秋風に吹きも折られで歌碑一基

野田の玉川(宮城県塩竈市)

美ちのくの伊達の郡の春田かな

法圓寺(福島県伊達郡桑折町)

粧ひて一切経はとはに燃ゆ

一切経山(福島県福島市)

万嶽を踏み破りもて紅葉狩

土湯峠(福島県福島市)

碧水に浮べて柳一葉かな

五色沼(福島県耶麻郡北塩原村)

頂に出て落葉なき眺めかな

筑波山(茨城県つくば市)

柳散清水涸石処々

遊行柳(栃木県那須郡那須町)

乃木の間の畳日焼けしサイダーぬく

大丸温泉(栃木県那須郡那須町)

飛燕群れ殺生石も古りにけり

賽の河原(栃木県那須郡那須町)

宮涼し什宝として蟇目の矢

温泉神社(栃木県那須郡那須町)

舟に乗れば残鶯の声湖をまろぶ

赤城神社(群馬県前橋市)

秋風やマント吹かるる詩碑の像

暮坂峠(群馬県吾妻郡中之条町)

夕立の句碑うづくまり凍解くる

三囲神社(東京都墨田区)

エノケンも心にありて萩に彳つ

伝法院(東京都台東区)

不忍に芭蕉の碑あり枯蓮

不忍池(東京都台東区)

梁に駕籠土間に自転車庫裏春日

深大寺(東京都調布市)

さしのぞく古井の水もぬるみけり

真間手古奈堂(千葉県市川市)

滝しぶきまひて山葵の花濡らす

浄蓮の滝(静岡県伊豆市)

うす衣を被きて愁ふ既望かな

下田大和館(静岡県下田市)

岩の上に傘を杖つく紅葉かな

昇仙峡(山梨県甲府市)

盆の供華抱いて泉にうつり過ぐ

月江寺(山梨県富士吉田市)

夏霧やペン字適ひし詩の章句

太宰治文学碑(山梨県南都留郡河口湖町)

雲居せる白き日輪冬峠

碓氷峠(長野県北佐久郡軽井沢町)

いやまさきく梅雨籠しておはしけり

虚子旧宅(長野県小諸市)

七太刀の碑を草に立て青嵐

川中島古戦場(長野県長野市)

六根に巒気の寒きほととぎす

戸隠奥社(長野県長野市)

領布ふりて花野のリフト摺れちがふ

車山高原(長野県茅野市)

霧の扉の咫尺に着きて山ホテル

赤倉観光ホテル(新潟県妙高市)

有磯辺に一すぢ遠き道の秋

常願寺(富山県氷見市)

鵜篝に風そひ鵜川せせらぎぬ

長良川(岐阜県岐阜市)

川風のこの涼しさに人むかし

長良川温泉「十八楼」(岐阜県岐阜市)

師に倶する仕合せかなひ翁の忌

義仲寺(滋賀県大津市)

「ちちはは」に時雨詣や妻とわが

高野山奥の院(和歌山県伊都郡高野町)

かゞやきて神ながらなる樟若葉

一宮神社(愛媛県新居浜市)

ゆくりなくここの子規忌に値遇の縁

正宗寺(愛媛県松山市)

道ばたに師の句碑立たす春深し

太宰府政庁前(福岡県太宰府市)

爪打ちの鐘の余韻は紫雲英野に

観世音寺(福岡県太宰府市)

うまごやし柵して廃墟なまなまし

浦上天主堂(長崎県長崎市)

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