湯の澤とて湯の泉あれど、ひやゝかなれば、夏はかり人の來て浴してけるやかたの、軒をつらねて、人なくあばれたり。めてなる社に藥師如來の堂あり。弓手に不動明王の堂ありけるに入りて見れば、瀧の、岩をはなれてたかく落かゝり、こなたのいはねまではひのぼりたる藤の、いくばくとしをかへぬらんかし、風情ことに、たきのいとおもしろし。 藤かつらくりかへし見るいはかねにかゝるも高き瀧のしらいと。
『辭夏岐野莽望圖(しげきやまもと)』 |
藤かつら |
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くり返し見る |
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いわがねに |
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かかるも高き |
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滝のしらいと |
滝壺の周囲全体に丸みがあり、昔の徳利に似ていてその徳利に上から酒(滝の水)そそがれているように見えることから「銚子の滝」と呼ばれるようになったと言われる。 また、先人たちは滝口が突き出ていたことから「堤子(ひさげ)の滝」とも呼んでいた。 滝の上流にはマンガンの鉱山や、付近には化石入玉髄瑞鳥石が産出され地質の構成では貴重な地である。 滝と深くかかわりのある湯の沢神社の祭神は不動明王で、開墓は不明だが享保郡邑記抜粋によると「湯野沢村貞享年代1680年代開発14軒」と記されており、温泉の発見と併せその頃と思われる。 明治初期、秋田藩士石井忠行の「伊豆園茶話」の一節に、湯の沢の滝は藤琴にあり「裏見の飛泉(ひせん)なり」と記述されている。 |
平成5年(1993年)月、白神山地は屋久島とならんで日本で初めてのユネスコ世界遺産(自然遺産)に登録された。 |
藤里町藤琴里栗の県道317号西目屋二ツ井線沿いに白神山地世界遺産センター(藤里館)(HP)がある。 |