与謝野晶子の歌碑
清 滝
与謝野晶子の処女歌集『みだれ髪』には京情緒を詠んだものが少なくない。 特にここ清滝をうたった秀歌数種がある。その中でもこの歌は平明で流麗、初夏の朝の清滝の風情をよく表現している。この歌は『明星』の明治34年7月号に発表されたので、同年5月頃の作と推定される。 おそらく「里の秋ここに夢ある清滝や母に具されし十七の秋」とよんでいる如く、少女の頃母と共にここを訪れ一夜をすごした折の情景を「ほととぎす自由自在になく里は酒屋へ三里豆腐屋へ二里」という顕光の狂歌にヒントを得てつくったものであろう。 誠に晶子の才気と歌の世界の素晴らしさは絶賛に値するといわねばなるまい。この碑は最初昭和33年4月に作られ、39年に一度修復されたものであるが、長年の風雨と心なき人々のために欠落して判読もできなくなったので、晶子生誕100年を記念してみだれ髪の会によって作り直され、渡猿橋直下で岸の自然の岸壁に歌碑を打ち込み、清滝保勝会に寄贈された。 |