宮本郷(大宮駅より二十町程北。)三室山の南麓にあり。土人宮本の簸(ひ)川社と称(とな)へ、又女躰宮と号す。祭神大宮同体にして、本宮大己貴命、右素戔嗚尊、左奇稲田媛姫命を斎(いは)ひ祀る。当社山中杉檜榊多く、社頭巍然として、瑞籬(みづがき)苔滑なり覡(きね)が鼓の音、朝の祈、夕の報賽(かへりまうし)、すずしめのこゑ、山林にひゞきて、さながら神感の興を催すらむといと貴し。神主武笠氏世々これを奉祀し、社領五十石を賜ふ。国初の頃、嘗つて神祖も神主の家に入らせたまひ、神領及び神宝等御寄附あらせ給ふ。古器古文書等神主の家に伝へて、これを蔵すといふ。
『江戸名所図会』(宮本簸川大明神) |
三室 氷川女體神社
さいたま市緑区宮本鎮座
当社は崇神天皇の御代に、出雲杵築の大社を勧請した古社で、 武蔵国一宮として見沼のほとりに鎮座している。 主祭神は奇稲田姫命で、 大己貴命と三穂津姫命を配祀している。 当社の御手洗瀬である見沼を囲み、大宮氷川神社(男体社)、 大宮中川の中山神社(簸(ひ)王子社)とともに、三社深い関係にあり「三室」を伝えてきた。 古代。女神を祀ることころや社殿が東方に向いているなど、その創立の由緒を偲ばせている。 中世以来。武門の崇敬を集めており、これらに所縁のある宝物も多い。徳川家康から拝領五十石を寄進され、また徳川家綱によって現存する社殿も建てられた。 古来からの御船遊神事は、見沼干拓後、磐船祭として行われ、その遺跡が現存している。 また、暖地性植物が繁茂する社叢は、天然記念物であり、ふるさとの森にも指定されている。 |