「河は長く流れて向山の松風静に渡る処、天神橋の欄干に凭れて」と描かれたここ浅野川は、泉鏡花の出世作「義血侠血」の舞台である。瀧の白糸はその主人公で秀麗な水芸人であった。 |
日を経て、再び私は金沢を訪れた。そして文学碑を見て歩いた。 浅野川畔、天神橋の近くにある「滝の白糸碑」。天神橋を渡って、卯辰山を登る途中、右手に、泉鏡花の碑。 ははこひし夕山桜峯の松 |
作詞 水木かおる
作曲 乙田修三 雪はまだ 河原に白く 指を切る 水のつめたさ 加賀の金沢 浅野・犀の流れ 明日をさがして さまよう恋に いのち華やぐ 夢染めて 春を呼ぶ 春を呼ぶ 友禅流し 露草で 描いた恋の 行くすえは 水に流れる これがさだめか 紅殻格子 慕う女の こころのように ゆれて揉まれる 絵模様の かなしくも 美しい 友禅流し 城下町 肩先さむく ひとり行く 水のたそがれ かすむ白山 夕山ざくら 夢も望みも ぼかした恋に せめて小さな 幸福の 春を呼ぶ 春を呼ぶ 友禅流し |
水芦光子
雪が空からおりてくる日は、その雪の襲い方とおなじ速度と密度で、地の底からも響いているものがある。 地の底で敲いている鉦の音かもしれない。 異様な、雪のしずかさを、聞きとがめる妙子は、朝から点けっぱなしにしている電燈のせいもあって、まるで時間の観念をなくしていた。今しがた、息子の彦一と、その婚約者が帰っていったあとの、ひとり取残された思いまでが、いっそ遠い過去のなかのことでもあるかのように、うつらうつらとしている。 |