高井几董



『続明烏』(几董編)

安永5年(1776年)、『続明烏』(几董編)。

  春 之 部

名の高き遊女聞えず御代の春
   宋阿

大雪のもの静さや明の春
   几圭
  浪速
元日や鴬もなかでしづか也
   旧国

   離 落

鴬のあちこちするや小家がち
   蕪村

うぐひすの卯の時あめに高ね哉
   几董

鴬にしのぶ帋衣の立居かな
   蓼太

(たがやす)や鳥さへ啼ぬ山かげに
   蕪村

火ともせばうら梅がちに見ゆる也
   暁台

暮るゝ日や庭の隅より梅の影
   樗良

青柳やおもふにけさの長短
   百池

何となく二月になりし柳哉
   乙児

わりなしや海苔に纏(まつは)るうつせ貝
   二柳

我寺の鐘と思はず夕がすみ
   蝶夢

背戸門のわからぬ家やもゝの花
   半化

児つれて花見にまかり帽子哉
   太祇

慰にうき世捨ばや花の山
   風律

行春や撰者をうらむ哥の主
   蕪村
 ハリマ
ゆく春は麦にかくれてしまひけり
   青蘿

うら垣やしらざれ李(すもも)日や倦(うめ)
   麦水

  夏 之 部

郭公待や都の空だのめ
   蕪村
 名古屋
ほとゝぎす山は女松の景色哉
   士朗

   長安万戸子規一声

ほとゝぎす南さがりに鄙曇
   暁台

   詩仙堂の辺にて

ほとゝぎす鴨河越ぬ恨かな
   几董

わかたけや橋本の遊女ありやなし
   蕪村

   白骨観

夏痩の我骨探る寐覚かな
   蓼太

みどり子の墨かひ付しさらし哉
   ゝ

川風に烏帽子かゝへて御祓(みそぎ)
   既白

  秋 之 部

   立 秋

秋たつやきのふのむかしありのまゝ
  千代尼

あはれ世や麻木のはしの長みじか
   也有

ひたと犬の鳴町過て踊(おどり)かな
   蕪村

負まじき角力を寐物がたり哉
   蕪村
  イガ
更る夜や艸をはなるゝむしの声
   桐雨

物焚て花火に遠きかゝり舟
   蕪村

   良夜訪ふ方もなく、訪来る人もな
   ければ

中々に独なればぞ月を友
   蕪村

   湖上眺望

名月や唐崎の松せたのはし
   几董
  仙台
後の月翌(あす)は秋なき思あり
   白居

憂我にきぬたうて今は又止
   蕪村

  冬 之 部

似た事の三つよつはなし小六月
   千代尼
  下総
姑の鬼もこもれる十夜かな
   閑鵞

我頭巾うき世のさまに似ずも哉(がな)
   蕪村

はつ雪や消ればぞ又艸の露
   蕪村

磯ちどり足をぬらして遊びけり
   蕪村

西吹ばひがしにたまる落葉哉
   蕪村

乾鮭や琴(きん)に斧うつ響あり
   蕪村
  結城
煮凍(こご)りや格子のひまを洩月夜
   雁宕

寒梅や雪ひるがへる花のうへ
   蓼太

とし守夜老は尊く見られけり
   蕪村

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