幾暁庵雲蝶
『俳諧百合野集』(幾暁編)
寛延2年(1749年)、幾暁は金沢に入り希因を訪ねる。高岡で越年。 |
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寛延3年(1750年)、再び金沢に赴き、師麦林(乙由)の十三回忌法会興行。 |
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寛延4年(1751年)、『俳諧百合野集』(幾暁編)刊。希因序。 |
歌仙 |
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姫百合の鬼もあるじや草枕 | 麦林 |
月照ながら若葉おり敷 | 春波 |
名録 |
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物いはぬ人揃ふたり秋の暮 | 麦林 |
かくれ家や桃の朧につゝまるゝ | 曽北 |
内外の宮に首途のぬさ奉て |
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霜のさく杉や朝日にすくむ袖 | 幾暁 |
錦渓舎の探題に |
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あと一羽まだ都なりかへる雁 | 幾暁 |
一夜に生ぜしといふ松原にて |
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是もまだ一夜の花や雪の松 | 仝 |
常宮にまふでゝ |
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鐘青し誘ふあらしも一つ色 | 仝 |
金津 有隣亭 |
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葉にも猶薫る風あり宿の梅 | 幾暁 |
耳にちなみの空に蝉の音 | 我六 |
菊図亭の閑窓に一夜やどりて |
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夜語の四方八方(ヨモヤマ)青しひとつ蚊帳 | 幾暁 |
全昌禅寺はむかし祖翁の杖とめられし |
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古跡にして庭はいて出ばやの柳ぞ |
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今にありときくものから、いざとて |
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まふでけるが、こゝろなくも梢などみな |
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打伐つて、其木とばかり淋うたてる |
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に、葉と覚へて一筋二筋のこれる |
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など、此道の糸筋を伝ひてと、祖翁の |
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常語もおもひ合せて、変化のさま哀 |
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なりけり。 |
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蝉うたふ枝に糸なし鉈のあと | 幾暁 |
山中 |
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武矩主は貞室叟に教へ、桃妖主は |
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祖翁に習ふ。 |
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松高き風にさらすや蝉の衣 | 幾暁 |
画賛 |
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人も鷺も捨て涼しき小舟かな | 仝 |
此地五十余章脱之 |
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雪とふらば一谷うづめ山ざくら | 桃妖 |
松任 人々に旅情をかたる、 |
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干瓜に并ぶ皺あり旅ごろも 幾暁 |
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此地六十余章不録之 |
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松の葉もよみ尽すほど涼けり | 女 千代 |
千代婦に対して |
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風も月もほそき扇に任せけり | 幾暁 |
金城 みな月十八日に入る。 |
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暮柳舎即興 |
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人のよる清水がもとの硯かな | 幾暁 |
此日幾暁法師をむかへて |
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待得たり団扇の顔にあたるまで | 暮柳 |
問るゝ峯を雲に指さす | 幾暁 |
葉月五日金城を去て、津幡駅 |
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雪燈下に夜話す。 |
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竹過る雨の数とや虫の声 | 幾暁 |
月まちて肌のあかるき夜寒かな | 見風 |
此地往来八十余章あり。 |
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鐘つゐて猶おもしろき柳かな | 見風 |