白井鳥酔

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『わか松はら』(鳥酔編)

宝暦13年(1763年)6月、松原庵成る。

宝暦14年(1764年)、『わか松はら』(鳥酔編)松露庵烏明序。

小   序
   松露庵主人題

ことしをはしめとして松はら庵に春興を集め、年々墓樹に懸む事を鳥師おもひ立けるを、聞及ふ遠近の詞友門葉蔽志して則二百餘章を得たり。嗚呼柳先師の餘徳なるかな。是をよろこひのあまりに自淨書して塋下に供し奉る精靈何そ微笑し給はさらんや。老憊の筆のふつゝかに蠅點の汚多しといへとも、至信のなす處さらに憚るへからすと、俺ひたすらにすゝめて刊者か手に落すものなりけらし

      寶暦十又四年龍甲申に次る春



 鴬の針こほしけ軒の松 柳先師

   おもしろや我かまつ原の初日かけ

      寶暦十又四年龍甲申に次る正朔



江 都

梅か香や鳥よりはやき人の跡
 百卉

水際を折々あけるやなき哉
 徐來

   松はら庵に遊て老師と共に古國の山を愛す

いさ向て咲ひあハゝや鹿野山
 至凉

  新年を祝せむと詞友食客四士と共に松原庵に來り、老師元日の歌
  を聞に、誠や太平の調あり、窓中詠やれは、處から磯に世わたる
  業もゆたかに覺ゆ

海苔取や是も四海の浪の中
 烏明

    觀 韓 客 松原庵窓外二月十五日

  いまや國家殷にとみ、男女に餘の布粟あれは家々は金銀の屏風
  にかゝやき、ちまたちまたは見るもの稲麻のことし、猶その邦に
  なしと聞へたる花も咲く時なり

日の本に驚く顔そ初さくら
 鳥醉



鶯は日を啄ミてはつね哉
 尺五

梅か香やさやかに遠き水の音
 如雪庵
 卷阿

武 藏

水へ來す空にも置かす朧月
 柳几

いつの間に海吸あけておほろ月
 烏明

曉も埋めたまゝや朧月
 鳥醉

   右三章 草庵に春夜の月を弄ふ

谷の戸に明たてのある霞哉
 八王子
 書橋

筏士の土橋にたはむ雪解哉
 卉光改
 兀雨

捨てある下駄に用あり梅の花
星布女

野心を人にもつける雲雀哉
  
 千杏

  老師か隱棲を來て見れは、松のひまにハ
     海あり、葉越にハ房總三州の山あり二題とす

山々の笑ひを忍ふ霞哉
 クリ橋
 素人

下 總

  松原庵の眼前は去年守黒忌に
     まいりて、此春興におもひやり侍る

青海苔や浪耕して海の味
  銚子
 弄船

足音は南にありて梅の花
 百井

上 總

  松はらの庵にあそひて

松原の奥猶深し春の海
 巨梅

  詞友巨梅子、松はら庵を見て歸り、其前庭春色をの
  聞ては我も共に遊ふこゝ地して

朝東風も百囀やまつの庵
 雨林

聲なふて空にあそふや鳳巾
 林鳥

鴬やこゝに岩戸の放し鳥
木の女

  ことしは南總東金に春を迎て
      老師の閑居を想像す

庵は今霞に船の品さため
 大至

仰向て梢の見へぬやなき哉
 雨什

  松原庵はしめの春興に
      柳の糸のたへぬ事を賀す

目印の柳や庵の繩すたれ
  用田
 鳥秋

雪解やうこかぬ雲は島になり
  
 鷄父

風の間を渦に巻るゝ柳かな
 アツキ
 梅明


  松はら主人か春興をあつめて、柳先師の塚前に驢鳴を
  なすとしらせ來るまゝに、ありあへる几上の一章をつか
  はす

雪解やけふは木挽も立た儘
  駿河
 琴堂

  松はら庵の賀

七種に先自在なる庵主かも
  尾州
 蝶羅

裾はかり朝日のあたる柳哉
  江州
 文素

枝々に岩越す浪や梅の花
 可風

山吹や古井に朽ぬ花の影
  奥州
 烏黒

行暮る所ては寢るこてふ哉
  越中
 麻父

梅咲や枝も朝日にあまるほと
  
 呉扇

草はまた枕に低し朧月
 麥浪

呉扇輯

  松風塚の手向に門葉詞友の春興を集るとて、社盟をす
  てす松原主人より告こしけるまゝに、ひたりの俚吟をい
  さゝかおくりものとす

不性さの氣はへたもよし梅の花
 座秋

火燧へも戻らぬ夜あり山さくら
 梅輦

鴬や藪を樂屋に吹そらし
 呉扇



   古 人 部

假橋もとけかゝりけり梅の花
  武州
古由子

   同庵古人部

うつむけはおもたき空や朧月
 左明

鶯や舌のまはらぬ鳥の中
 星飯

鶯や隣は美濃の朝ほらけ
 戸凉

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