俳 書
『千鳥墳』(徳雨編)
十一月三日 |
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前夜之吟懸御目候 |
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一疋のはね馬もなし河千とり | はせを |
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千鳥鳴くかも川過つ鉢たゝき | キ角 |
からまいて水にも飽くれす藤の花 | 徳雨 |
題鶯宿梅 |
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妹か家を嗅出されけり梅の華 | 浙江 |
此春始て千鳥墳に詣て |
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かげろうふも千鳥にたつや墳の上 | 阿誰 |
隠されぬものきさらぎの匂ひ哉 | 文楼 |
見に行といふ人もなき柳かな | 芭蕉 |
奇寒江淮氷(ママ) |
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境連 |
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風痛く水さへ石と成夜かな | 浙江 |
名月の雨に深川風うすし | 芭蕉 |
女 |
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出舟の笠ふり帰るすゝき哉 | 琴露 |
雲水の跡へ戻らぬ月見かな | 祇〔徳〕 |
けふの月桜町殿想ふなり | 阿誰 |
名月や黒きは富士の雪計 | 徳雨 |