文化13年(1816年)7月10日、『杖の竹』清書。同年閏8月12日、『杖の竹』撰集終わる。
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十 晴 上丁ニ入 杖祝集為清書
『七番日記』(文化13年7月) |
[十]二 晴 撰集終
『七番日記』(文化13年閏8月) |
文化13年夏の聞濤軒松宇自序の後、最初に一茶と松宇の連句がある。
隣から若竹来たりそよぎたり
| 松宇
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山郭公(ほととぎす)大晴(おほばれ)の月
| 一茶
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信濃を初め、「みちのおく」から「ながさき」まで各地の俳人の句が紹介されている。
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柿の木の下は内義(儀)のきぬた哉
| 春甫
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蚤取て嬉しがりけり角力取
| 松宇
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見せ馬の蠅に痩たり秋の暮
| 呂芳
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柿の葉にあられならべるめのと哉
| 掬斗
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あら暑しあつし何して暮すべき
| 完芳
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晒し井や天窓くだしの俄雨
| 素鏡
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萩ちるや一杵車水のとぶ
| 魚淵
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老婆洗衣画
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彼の桃も流れ来よ来よ春霞
| 一茶
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| 石ムラ
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昼顔の庵やかならず金ぼとけ
| 白斎
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細けぶり我宿ならん帰る雁
| 反古
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黄鳥(うぐひす)やどこの初音の足ついで
| 文路
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人の親の珠数(数珠)も小銭も時雨けり
| 武曰
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| 六川
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水仙にうしろを見する住居かな
| 知洞
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葉ざくらにまめな連節通りけり
| 春耕
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| 湯田中
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うめ咲て雀の朝にしたりけり
| 希杖
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我庵や時雨の中を横月夜
| 其翠
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| アサノ
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春風や夜着の袖から鳰の海
| 文虎
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初霜や豆腐のうまい草枕
| 竜卜
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十月や多くも見ゆる山の数
| 雲帯
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馬の子のうしろ暮けり秋の風
| 梨翁
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梅咲やいかなる花にせつかれて
| 葛三
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春の夜の足にからまる庵哉
| 素檗
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独楽坊を訪ふに、錠のかゝりければ、三界無
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安と言ふ事を
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蠅よけの草もつるして扨どこえ(へ)
| 一茶
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むさし
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故めくや焚ぬ塩屋も神の留守
| 金令
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物むづかしきあたりなれど、さすがに松など
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立渡したる
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小家みな我春々と思ふかな
| 成美
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秋の日や何を観じててゝつぽう
| 完来
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麦打や井戸のあちらの花葵
| 寥松
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庇洩る日に事たりて宿の春
| 午心
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しら露やじつとして居る山の雲
| 一峨
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秋風の吹込くらき箱根山
| 焦雨
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闇がりは蚤の浄土よあきの風
| 対竹
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小雀(こがら)なけ十日の菊のあい(ひ)しらひ
| 碓令
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蜻蛉や天上したる門の川
| 車両
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三芳野ゝ雁になれなれ月も秋
| 永帰
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菜飯にはよきうつろひや春の山
| 国村
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作り菊たゞの人にも見られけり
| 菜英
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見るうちに時雨て行や市の人
| 久藏
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寒月や棒のやうなる人が来る
| 一瓢
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しもつふさ
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素湯(さゆ)の香のかたじけなさや初時雨
| 素迪
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はつ霜や鳩の嘴する敷むしろ
| 至長
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淋しさに炉の炭つぎてまぎれけり
| 李峰
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てふ飛や十を頭のいせ参り
| 一白
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我と雁けふも夕を帰るなり
| 月船
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岩角に鹿のあを(ふ)むくしぐれ哉
| 斗囿
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菊咲や田舎歌舞伎が宿につく
| 雨塘
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とべ螢頼む木影もある物を
| 鶴老
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かみつふさ
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白露や門の小橋に名のほしき
| 白老
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出代りのうしろ姿や馬も嘶く
| 砂明
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暁やまたあらためて遠きぬた
| 雨十
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あ は
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むら落葉汐みち来れば又ひけば
| 杉長
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かうづけ
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鰐口に楓はさむやあを嵐
| 鷺白
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みちのおく
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明松(松明)の山え(へ)わかれてなくかはづ
| 雨考
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光堂
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露の身に明りさしけり堂の隅
| 乙二
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乾鮭を本尊にして冬籠
| 冥々
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間(ひま)に成し人のおほさや梅の花
| 曰人
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太刀持と女ものいふ若葉かな
| 素郷
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杵うたに雪を諷(うた)ふや丘の家
| 平角
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| 松マヒ
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人声や稲の香よりぞ吹おくる
| 布席
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いでは
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あたらしき風が吹なり天の川
| 野松
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戸の口へ下(さが)りて来るや夕雲雀
| 仙風
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さがみ
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起されてふいと出たれば芥子の花
| 雉啄
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をはり
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目ふさげば耳にこたへる須磨の秋
| 岳輅
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か ひ
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おし出してやりたき山や夏の月
| 可都里
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藁やねのふたつ春めく岡辺哉
| 漫々
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ゑちご
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寒しとは世に有人の言葉かな
| 幽嘯
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せふつ
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雁も来てきげんとるなり山の月
| 三津人
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庵の柴雪の覚悟はなかりけり
| 奇淵
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かふち
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旅人の拝む仏が霞けり
| 耒耜
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最後に一茶と松宇の句が並べて収録されている。
国家安全
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松かげに寝てくふ六十餘州かな
| 一茶
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五穀成就
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万代(よろづよ)や蝶が出たれば草も出る
| 松宇
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一茶の句は文化9年2月に守谷の西林寺で詠まれたもの。
西林寺

賀治世
松陰に寝てくふ六十よ(余)州哉
| 一茶
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鶴と遊ん亀とあそばん
| 鶴老
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