藤森素檗

『曽良句碑建立句集』


 文化5年(1808年)、諏訪の俳人藤森素檗が曽良の百回忌を記念して遠藤日人に依頼して松島に曽良の句碑を建立した記念集。

芭蕉と曽良の句碑


朝よさを誰まつしまぞ片心
   芭蕉

松島や鶴に身をかれほとゝぎす
   曽良

右が曽良の句碑。

仙台の大場雄渕と松井梅屋編。巻末には「釈 湖雲撰」とある。

雄渕は大崎八幡神社の神職。梅屋は仙台藩医。湖雲は石巻の僧。

文化5年(1808年)5月25日、刊。

追々に夜のこゝろや夏の月   素檗

垣衣にあまる窓の涼かぜ   湖雲

杣の雫墨するほどハ傳ふらん   曰人

海の雀の人よれとなく   浦人



   四季雜編

歯のぬけたやうに花さく老木かな   蕉雨

桐一葉めし炊こともなかりけり   若人

かれえだにかゝらむとして秋の雲   鶴老

小夜碪寝て聞とりの外ハなし   虎杖

竹うゑし日もなつかしや初しぐれ   雲帯

松かげに取つくしけりあやめぐさ   素檗

折うちに馬の遠のく花野哉   柳荘

夜のさまをミなゆづりたる蛙かな   蒼キュウ
   ※キュウは虫+おつにょう
雨の日は古里寒き早苗かな   耒耜

三たびまで白菊画て捨にけり  ナニハ 三津人

むら雨の降こすあとや蓼の花  名ゴヤ 臥央

月華を捨てミたれば松の風   士朗

耳の垢とれば小寒し菊の花   松兄

我宿にかれ木のほしきしぐれ哉   岳輅

屋根板の吹ちりにけり萩すゝき  大ツ 祐昌

暁るまの取ところなく霞けり   国村

高ミから見ればはたらく案山子哉  セキヤ 巣兆

五月雨も水くむほどの晴間かな  エド 成美

蓬生やなでしこを草になし果し   美千彦

綿つミに鶯ひゞく日和かな   完来

たる事のうへを桜の月夜かな   春蟻

鉢たゝきあしたにハ米をはかり鳬  アサカ 露秀

花の雨てりてり小法師まけにけり   冥々

松嶌の町家のうらや梅のはな  白石 乙二

松風も琴の音もありかんこ鳥  花マキ 鷄路

春の霜やゆかしき人の上草履  イワテ 素郷

新月の影すさまじや立烏ぼうし   平角

松原やすこしの隙も秋のそら   巣居

朔日の青竹たゝく扇かな   曰人

消る時日のさす雪の御島哉   雄渕

   竹の浦にて

四五日の栖となりぬことし竹   湖雲

 右

文化五年五月廿五日

 松嶌御嶌松吟菴於曽良道人碑前

      釈 湖雲撰
      崎 雄渕書

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