箱島阿誰

『その人』(浙江編)



安永元年(1772年)12月15日、阿誰は62歳で没。

安永5年(1776年)、阿誰の追善集『その人』(浙江編)刊。存義無一居士序。

辞世

安養浄土とやらんは、四季寒暖もなく、万木千草、花絶ることなし、と主の手招きに草鞋しめて、

兼てなき身けふぞ花見に死出の旅
   阿誰

   病中

きのふ過けふぞ千とせを経る齡ひ

   あすをたのまぬこゝろやすさよ

家君、五とせ先、いたづきに臥給ふに、くすしの手をつくし、神に祈り仏にたのみ侍りしかば、いつしかこゝ地まめやかに、月雪にうかれ、はなもみぢにずんじ、やゝ顔色常なりし。うれしき日数もすみやかに過て、ことし師走望月の影を見残して、六十三の春秋のゆめとさめぬ。云々

(いま)す歟と障子あくれば火桶かな
   浙江

   祖父の喪にこもりて、紅涙千行

雪や花や見へ隠れなるあみだ笠
   志寧

   歌仙

あくる戸に二人かゝるや今朝の雪
   阿誰



郢月泉のあるじ巴人庵の門に入て、予とちぎり深き人なり。ことし末の冬中の五日、なきひとの数に入ぬときゝて、

耳さむし其もち月の頃留り
   夜半亭蕪村

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