建部巣兆

『曽波可理』(巣兆自撰句集)

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 文化14年(1817年)、『曽波可理』(巣兆自撰句集)刊。鵬斎抱一序。国村跋。

国村は武州蒲生(現:越谷市)の俳人。巣兆門。秋香庵を号した。

巣兆発句集

 自撰仝筆

   難波にて

舟曳や五人見事に梅を嗅

   なの花

菜の花や染て見たいは富士の山

うぐ(ひ)すの屋根からをりる畠かな

芹生にて芹田持ちたし春の雨



   時鳥

谷へ掃はゝきのさきやほとゝぎす

時鳥まだ見に来ずや墨田川

曲り込む藪の綾瀬や行螢

山路来て見事に歩行(ありく)若葉かな

   妻沼にて

五月雨やまくら借たる桑の奥

   清水

ひやひやと田にはしりこむ清水哉

花桶もいたゞき馴れし清水哉

見し人の鍋掻て居る清水哉



 一、 巣兆居士年来の玉句ども数吟御写し被下候様ねがひ上候。句集御出し被成候事、明年頃が可然候。急ぐとあやまりあるものなり。かねての御懇意、小子にはいづれ御内見希候。


   六月廿五日



   信州若人

    七夕後朝(きぬぎぬ)

朝皃の花に澄みけり諏訪の湖

日ぐらしも啼ねば淋し初もみぢ

柞原薪樵るなり秋のくれ

   広田社

鳥居出るお(を)しさや杉に秋の月

象潟の合歓の落葉や后の月

柞原薪樵るなり秋のくれ

   霜月なかば、松もとより故郷へ帰るとて

初雪に着るや古手の蔦の紋



   信柳荘追福

月を見に今年も出ばや寒念仏

斗入法師身まかりけるしなのゝ国七久里の湯といふ処に行て、その跡を吊る(とむら)ふとて

惟茂とおなじけぶりや積落ば

梵論(ぼろ)の行梺静に落葉哉

爺婆ゝの有がたくなる木の葉哉

   みちのく行脚の頃

榾焚てよしつね殿をひゐ(い)き哉

   年 暮

煤竹もたはめば雪の雀かな

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