大里桂丸

『椎柴』(桂丸編)


文政3年(1820年)、『椎柴』(桂丸編)刊。豊島久藏跋。

   安 房

心うくうれし霜にも花が咲
   杉長

   上 総

雲となり不二となり又霞けり
   里丸

   下 総

八朔の鷄遊ばせるやしきかな
   雨塘

簔かけて我なつかしやたま祭
   李峰

   望西台にあそびて

七夕のもしやうつるとつゆの玉
   桂丸

   常 陸

くちきりし花や松風おしもどす
   李尺

よる浪に扇とらるゝはる日哉
   松江

(なぎ)の木に風ふくことよほとゝぎす
   由之

しづかなる日の暮やうや冬の雨
   隨和

世のあかもつかづ(ず)五月の真菰草
   湖中

   近 江

青空や葉に茂るにも朝桜
   千影

   信 濃

短夜の空とぶつゆやほとゝぎす
   素檗

赤菊のよわみに落る西日かな
   若人

宵の梅こゝろに匂ふ此あたり
   壺伯

羽箒の夜のかげ見よ春ちかみ
   武曰

何となく春の乗たる柳かな
   八朗

鶯を取てのければ枯木なり
   何丸

じつとして袖に這する螢かな
   文路

芽出しから人さす草はなかりけり
   一茶

   陸 奥

ある僧のすまして去し清水哉
   冥々

土筆(つくつくし)風の小松もうらやまず
   乙二

下総は遠山のみぞふゆ椿
   夢南

十六夜やまだ夕顔の実なし花
  多代女

さくにしていかにもせはし冬の梅
   雨考

越ゆくや末の松山ほとゝぎす
   平角

さいて見て咲たやうすや初桜
   馬年

山水や秋はへるへる尾花さく
  きよ女

薺撰(え)る宵や御次の丸行灯
   雄淵

水くさき浅香むすびやあやめ草
   如髪

朝顔を見いれて淋し腹の中
   掬明

一粒もなげやりはなし草の露
   太呂

みじか夜を咲てぬからぬ小蒜(のびる)かな
   曰人

めに見えて心に寒し石蕗(つは)の花
  草キョ

明るさの心にあまるかれ野かな
   布席

閑古鳥青きほかには色もなし
   素郷

   出 羽

雨のふるばかりになりぬ春のやま
   仙風

   若 狭

妻里のひかり残るや軒の草
   素玩

   加 賀

かさなれば同じ草也萩すゝき
   鹿古

   越 後

どのやうな樹がうれしいぞかんこ鳥
   竹里

   播 磨

淋しさは螢どころのよるの雨
   玉屑

   備 中

ねばり気のぬけ降也春の雪
   閑斎

   安 芸

住吉は歌の神也はるの海
   玄蛙

   日 向

炉ふさげばおなじ処へ猫の声
   真彦

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