俳 書

『しぐれ会』(明和6年刊)


明和6年(1769年)、芭蕉堂成就。

祖翁正当忌日は、ふりみふらすみ神無月中の二日也けり。けふや比良・横川の高根もけしきたち、湖の面ところところしくれて、ねくらさためぬ水鳥も、浪間に通ふ千鳥の声も、さなから昔をしたふに似たり。されや「世にふるも更に宗祇の」と先達の観相を称嘆せられしも、まのあたりに尊まれ侍れは、年々此日をしくれの会式と名つけて、時雨の句々を廟前にさゝけ奉るものならし。、

粟津浮巣庵

右は、古人のさため置し一紙を其儘に、年々此集の序文として、此会式懈怠有へからす。蝶夢

   探 題

よる年もしらてまねくや枯尾華
   文下

霜しらぬ梢なりけり帰り花
   只言

木からしや出口へ□くすさましき
   阿雖

雪垣や隣へ遠き家となり
   蝶夢

   席上奉納

芭蕉堂成就を悦ひて
  
けふよりそ堂に時雨をきゝそめん
   文下

初しくれ古ひたる物はかりなり
   阿雖

幾度か降そこなふて初しくれ
   只言

   軒ふり雨もりし堂なりしも、風雅の
   余徳あまねくして、今月今日時雨の
   会式にあらたに此堂の成就し侍れは

うれしさやけふの御堂の初しくれ
   蝶夢

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