俳 書
『しぐれ会』
(明和5年刊)
明和5年(1768年)8月、浮巣庵
文素
歿。
祖翁正当忌日は、ふりみふらすみ神無月中の二日也けり。けふや比良・横川の高根もけしきたち、湖の面ところところしくれて、ねくらさためぬ水鳥も、浪間に通ふ千鳥の声も、さなから昔をしたふに似たり。されや「
世にふるも更に宗祇の
」と先達の観相を称嘆せられしも、まのあたりに尊まれ侍れは、年々此日をしくれの会式と名つけて、時雨の句々を廟前にさゝけ奉るものならし。、
粟津浮巣庵
探 題
ぬれに出る子をあふなかる紙衣哉
阿雖
鐘楼の袂へはいる木の葉かな
蝶夢
文通奉納
伊勢
長ふない日影ちゝめてしくれかな
二日坊
陸奥
さゝ波に一こほしつゝしくれかな
里圭
播磨
寺々は鐘つき出すや夕しくれ
山季坊
俳 書
のトップページへ