吉川五明

『小夜志久麗』(尋風編)



文化12年(1815年)、吉川五明十三回忌の追善句集。子日庵一草跋。

照井尋風は大館の医師、名は順益。百合庵。

ふる中へ降こむおとや小夜時雨
   五明

老師よりの文にあるを、こゝにあげて、けふの追善をいとなむ。

人もきけこれぞかたみの小夜時雨
   尋風

 葉に香残して散り茶の花
   月遁

木牛を三ツならべたるうらゝかに
   素郷

 水も車も永き日のあし
   鷄路

薄月夜わするな春はなくなるぞ
   笘庵

 うちかしこまり童子笛ふく
   冥々

夢に見し古楠を伐[り]かねて
   成美

 南ぐもりにほとゝぎすとぶ
   常南

行平も硯ひろいに明石潟
   一瓢

 祭の萩をひっかたげゆく
   一茶



   くさぐさ

人住て猶わびしさや山ざくら
   道彦

 古人
下り坂の柳みとふ(ママ)すむ月哉
   宗讃

そよ風や名鶯の顔へ来る
   渭虹

夜桜や明日ある人は帰るべく
   一草

   跋

日は花の中より暮[る]る木槿哉
   鶴頭老師

此[の]句を自得観念して、程なく終焉し給ふ。年々の流行はかはるとも、秋ごとに此[の]吟を感思せざる秋もなし。今とし十まり三つの忌を祀[ら]るゝよし、尋風ぬしの告らるゝまゝ、八十五耄のひとことをしるす。

   小夜庵のしぐれを聞いて玉祭

子日庵一草

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