吉川五明
『小夜志久麗』(尋風編)
ふる中へ降こむおとや小夜時雨 | 五明 |
人もきけこれぞかたみの小夜時雨 | 尋風 |
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葉に香残して散り茶の花 | 月遁 |
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木牛を三ツならべたるうらゝかに | 素郷 |
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水も車も永き日のあし | 鷄路 |
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薄月夜わするな春はなくなるぞ | 笘庵 |
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うちかしこまり童子笛ふく | 冥々 |
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夢に見し古楠を伐[り]かねて | 成美 |
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南ぐもりにほとゝぎすとぶ | 常南 |
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行平も硯ひろいに明石潟 | 一瓢 |
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祭の萩をひっかたげゆく | 一茶 |
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くさぐさ |
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人住て猶わびしさや山ざくら | 道彦 |
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古人 |
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下り坂の柳みとふ(ママ)すむ月哉 | 宗讃 |
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そよ風や名鶯の顔へ来る | 渭虹 |
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夜桜や明日ある人は帰るべく | 一草 |
跋 |
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日は花の中より暮[る]る木槿哉 | 鶴頭老師 |
此[の]句を自得観念して、程なく終焉し給ふ。年々の流行はかはるとも、秋ごとに此[の]吟を感思せざる秋もなし。今とし十まり三つの忌を祀[ら]るゝよし、尋風ぬしの告らるゝまゝ、八十五耄のひとことをしるす。 小夜庵のしぐれを聞いて玉祭
子日庵一草 |