夜伽の句あらまほしと有けれは
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病人のあまり啜るや冬籠
| 去來
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うづくまる藥の下の寒サかな
| 丈艸
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外又十句餘有此句中にも
出來のよし病翁も称美アリ
終に十二日ニ相果申され候
十三日遺骸を近江松本」の
木曾塚の寺にて葬送仕
一基立置申候
右病中以來臨終追悼の
句共文章を添て枯尾花
と号シキ角終焉記を書て
追付出版に及申候
下略之
支考惟然兩人病中前後勤之
枯尾華臘月十八日下着
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十一日は加рノおもむく事有て
しはらく彼地に逗留し侍り
北枝句空なと會盟して
亡師の百ケ日を悼て各打
寄て一巻を結ふ逗留間も
なけれは十八日に催しぬ
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亡師百忌 廿三日
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問ひ殘す歎のかすやんめのはな
| 北枝
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春も氷に沈みつく池
| 浪化
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小田返す馬の鞍蓋こしらへて
| 句空
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石つる方にと屋のかたよる
| 林紅
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米(シロ)ミヅ(※サンズイに「甘」)の二番取おく月の影
| 牧童
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桐の葉ちるを秋の手はしめ
| 筆
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廿一日
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同百ケ日追善會於卯辰山
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生駒氏万子興行 百韵アリ第三迄
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泣そめし時つほみけり梅の花
| 万子
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旧年翁の終焉を聞て各悼める句
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翁の事霜月三日の暮方にうち聞て
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聞忌にこもる霜夜のうらみ哉
| 北枝
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誹諧の神なし月を歎キけり
| 牧童
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落着はなにはの夢や都鳥
| 句空
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抹香をひねりて
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風わたる枯葉に見るや雪の舎利
| 秋之坊
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冬籠うき次手なる別レかな
| 卍子
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弥生の比本寺の御許に御とふらひ
わさせさせ給へはやつかれも其
むしろにつらなり侍らんと三月
六日に旅たち侍る
門下の輩送り出て折からの柳を綰ぬ
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陽炎や雨にもあわぬ笠の色
| 嵐青拜
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倶利伽羅は越路の切処なれは人馬困り
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朝霞み峠を越る馬の息
| 化
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加賀の小松より少上つ方に今井
と云ふ處有今井の四郎か城跡也
今に古廓の形殘れり其兼平
石基は西向に立たり石の面に芭蕉翁
の三字を彫付たり晋子筆跡左は木曾
に相並へり北は湖水にのそみ
名山左右に連り有りかたき勝地
なり又无名庵は墓のうしろに
有リ翁殘生の内より丈艸に付
属なり即丈草をとふらひて談話
刻をうつす申の時斗に入洛ス
甲戌の夏古はせをの嵯峨の
辺に逍遥して
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清瀧や浪に塵なき夏の月
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と有けるを同しく冬浪花にして
病給ける床の上にも門生のやから
を近付て清たきの句心かゝり也
とてかくはいかゝとの給ふ声もかすかなり
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