榎本馬州

『奥羽笠』

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 元文5年(1740年)2月、榎本馬州は『奥の細道』の跡を辿る旅に出る。12月、白梵庵に帰る。

東海道を江戸に向かう。

八橋の跡を訪ねる。

名にし負ふ澤邊を見れば、あさましき人面獸心の者ありてや、藁古莚の類を捨て置きたり。予見るに忍びず、もすそをかゝけてこれを取りあげ、しばらく白眼にして立ちたり。

   業平に違ふてさはぐ諸子かな

小夜の中山を駕籠で越えた。

   春雨の命なりけり拾ひ駕籠

大井川を越える。

   獺も雪解祭れ大井川

3月末から4月半ばまで江戸に滞在。

長慶寺の翁塚を訪れている。

   花に涌く毛虫惡くからん塚の神

『奥の細道』の跡を辿る旅に出る。

春雨に笠ありとたはむれて尾陽を出でしは昨日今日なるに、上野飛鳥の花も散りはて、杜鵑の聲々に肝つぶれ、又はるばるの奥羽に赴く雲水の身ながらも、留るところ名殘ありて餞別の句々に袖をぬらす。

   這ふあとを文字とも讀めやまめくじり

裏見の滝を訪れている。

   硝子(びいどろ)のあちらは夏の瀧のうら

松島を訪れる。

來れりや得たりと頭を叩いて、左右に延びあがり、うしろに居直りなど、見漏らさじとする程に、さまざま替りゆく島の姿、又幾島のあらはれ出づるにぞ、あれやあれやと手を拍つてうめけば、御僧は狂人にやと船頭にあやしめられぬ。

   たましいか鳥か千鳥の夕涼

平泉に着く。

   聞えしは此夏草の夢二つ

   辨慶はかうも破つたか冷し瓜

平泉から達谷窟を訪れている。

毘沙門堂


   一つ葉や夏に寒毛(そげ)立つ岩の奥

象潟を訪れる。

   潟のたれや雪の高根に釣る鱸



南冥に羽搏ち、芥子中に坐するも此心性の足る所なるを、いらざる長旅に足痛めけるよと、初めて一年の馬鹿を笑ふ

   雪ちらちら屋根の透間も天の原

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