田村巣居
『おくの海集』(巣居編)
巣居は仙台原町の観音堂別当清光院十世権大僧正亢亮。俗姓田村。別号桃地。丈芝坊白居の門人。 |
島ハ |
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松しまやこゝろ探れハ夢ならす | 対竹 |
尼 |
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まつしまや小春ひと日ハ漕たらす | 菊車 |
ほちほちとうまるゝ露の千松島 | 百非 |
中島の梅折に行く小船哉 | 巣居 |
野は |
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かまきりの風に身を置く芒哉 | 士朗 |
杭うてハ野から畑からかえる雁 | 蕉雨 |
浅茅野や霧の上行影法師 | 冥々 |
ミちのへや小萩にうつる稲の虫 | 樗堂 |
曇りても日の暮さうなすゝき哉 | 雉啄 |
芒野や穂に出さうなる家計 | 午心 |
みかさと申宮城野に遊て |
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木の下やいかさまこゝは蝉ところ | 巣兆 |
萩ふせは藜(あかさ)さわくそ夜も昼も | 鷄路 |
芽花野に人の出ぬ日ハなかりけり | 百非 |
山ハ |
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かしこにも人往けりな山をやく | ミち彦 |
鶯の寝ところ見たりしのふ山 | 長翠 |
火串さす陰にあたゝら樗哉 | 平角 |
草の戸やそれも霧たつ山樒 | 馬年 |
松山や風のしたより雉子の声 | 恒丸 |
秋の山霧て書たるすかた哉 | 五明 |
旭よき山家に住んて后の月 | 素檗 |
さくらは |
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たそかれや見ぬ世の人を花の上 | 臥央 |
世を捨にありく桜の木の間哉 | 士朗 |
海は |
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夕たちのあとおしてるや海の月 | 雄淵 |
池ハ |
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はつ雪やふかるゝ鴦の草かくれ | 雲帯 |
鳴蛙かわらぬ顔をうかめけり | 葛三 |
川は |
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よき水のはしる音する若葉哉 | 素郷 |
小鮎くむ花のしからミかけしより | 岳輅 |
橋は |
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人音も緒絶の橋や夜の雪 | 蝶夢 |
ミしか夜の夢や緒絶の橋の音 | 暁台 |
浦は |
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うくひすの脛まてかゝる小波哉 | 可都里 |
原ハ |
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挑灯のふくれなからや霜の原 | 成美 |
子規鳴や長者も真野のおく | 国村 |
里ハ |
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山風か里へ出たかる紫苑哉 | 曰人 |
井ハ |
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山の井や汲に出たれハ秋月 | 秋挙 |