五味可都里

『ななしどり』(可都里編)


寛政8〜10年に詠まれた句を収録。

寛政八丙辰年

   秋の遊び

雁啼やたえて又見る天の川
  可都里

 月なき磯の秋をたづねて
   士朗

柳散る宿の桂も莟むらん
   袋青

 雨の衾のとるも侘しき
   斗入

馬追にせり立られし朝朗
   岳輅



あさ皃やひとつ咲ても秋の花
   嵐外

女郎花あらゆる草に交りけり
   如毛

我老をかろく来てふけ秋の風
   星布

はやあすのけしき也けり三日の月
   素檗

砧打居れば身に添ふ月夜哉
   羅城

   をのむのなげき、更にせんすべもあらず

橘の実を喰ふ寺の雀かな
   重厚

降雨のいつをはてしの夜寒かな
   雲帯



寛政九丁巳年

   春の遊び

春の夜は心のあまるばかり也
  士朗

 たとへていはゞ梅の月人
   可都里



   くさぐさ

だんだんに鴬来たり裏の山
   蟹守

梅は梅の香にあらたまる月夜哉
   伯先

松風もなしよ田にしのふたあけて
   鹿古

   病中

寝処に半分見える柳哉
   蕉雨

春の夢よく見て覚て忘れたり
   虎杖

ちかづきのやうなり春の朝ぼらけ
   丈左

   荘子画賛

高う飛ぶ蝶や菜の花に心なくて
   二柳

春の人是も柳にかくれけり
   臥央

このもしき庵や桜にさひかへり
   士朗



   冬の遊び

こがらしの中にしづけき朽木哉
   闌更

 冬のこゝろは鳥にまされり
   祥夷



   くさぐさ

不二を出し雲より時雨初にけり
   恒丸

等閑のしぐれなりけり二日月
   春蟻

紅葉たく門は日暮て北時雨
   玉屑

とにかくに夜はあけかぬる落葉哉   漫々

大根曳て松はひとりになりにけり   成美

むつまじや鵆が中の三軒家   一草

   恋

紙衾一夜にしきの夢ごゝろ   月居

灯ともして人にしれつゝ冬篭   冥々

雪雲の吹つけられし筑波かな   長翠

明る日の雪のうき舟便よし   春鴻

よるの雪月は真うへに成にけり   柳荘



寛政十戊午年

   夏の遊び

竹の子やひと夜にかづく八重葎   暁台

 雨をあるじの皐月来にけり   士朗



   くさぐさ

咲つゞき咲つゞき藤の若葉哉   斗入

寒きほど若葉が上の月夜哉   鸞岡

郭公けだかきよるのけしき哉   岳輅

何の木に何の心ぞ閑古鳥   可都里

来ぬはづよ歯のなき口によぶ蛍   五明

みじか夜や日枝の山風波の音   松兄

撫子のいかなる野にも咲にけり   葛三

閑かさや柚の花こぼす一しきり   双烏

夏の菊皆露かげに咲にけり   巣兆

青鷺の声の下なり淀八幡   百池

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