鶴田卓池
「長崎紀行」
文政十年丁亥歳四月廿七日出立西遊 |
杖突坂にて 杖突ハ歩行こそよけれねぶの花 幻住庵のあとを問て ひやひやと苔に膝置わかばかな 須 磨 罌粟ハ皆花のあとなり須磨の浦 こりすまや蜑が手わざも麦の秋 明 石 夏めくや月もあかしの舟どまり 象頭山にて 空よけて鳴や御山のほとゝぎす |
安芸の宮嶋に詣づ本殿の趣ハ申に及ばず舞台回廊のかゝり又あるべしともおぼえず嶺よりおろす風の薫りたゝへる潮の花をさそひて古きをしのぶことのみ多し |
日盛もしらず一日厳しま |
錦帯橋 踏かたへ風のかほるや橋の上 |
安徳帝の御陵を拝して浦辺にいづる 目にいたき風やうき藻のうきしづみ 博多八幡宮に詣て敵国降伏とある楼門の額 を見る わが国のかためや露の宮ばしら |
宰府天満宮にて おもひでや桜の一葉を袖の上 |