俳 書
『句餞別』(芭蕉翁撰)
貞享4年(1687年)10月末、芭蕉が「笈の小文」の旅に出る際に贈られた餞別の詩歌・発句の類を収めたもの。 寛保4年(1744年)、祇徳は『句餞別』(芭蕉翁撰)自在庵祇徳跋を翻刻刊行。 芭蕉自筆の真蹟は常陸潮来の本間自準亭に伝来し、嘉永元年(1848年)『夏しぐれ』の題名で覆刻された。 |
芭蕉庵主しばらく故園にかえりな |
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んとす。とめる人はたからを送り、 |
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才ある人はことばを送るべきに、我 |
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此二ツにあづからず。むかし、もろ |
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こしのさかひにかよひけるころ、 |
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一ツの烏巾を得たり。これをあた |
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へて、たからと才にかふるものな |
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らし。 |
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素堂山子 |
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もろこしのよしのゝ奥の頭巾かな |
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不卜 |
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留守のうち猶やせぬべし冬の菊 |
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ちり |
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來月は猶雪ふらん一しぐれ |
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東來紫氣 | 曾良 |
俳諧説て關路を通るしぐれ哉 |
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釋 宗波 |
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我夢を嚔(ハナヒ)ん霜の草枕 |
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野馬 |
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朝霜や師の脛おもふゆきのくれ |
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由之 |
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はこね山しぐれなき日を願ひ哉 |
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孤屋 |
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十徳に綿をいれたき霜路哉 |
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嵐雪 |
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凩の吹キ行クうしろすがた哉 |
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其角 |
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冬がれを君が首途や花の雲 |
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俳諧哥仙 |
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旅泊に年を越てよしゝの花にこゝ |
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ろせん事を申す。 |
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露沾 |
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時は秋吉野をこめし旅のつと |
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鴈をともねに雲風の月 | 芭蕉 |
山陰に刈田の顔のにぎあひて | 沾蓬 |
武者追つめし早川の水 | キ角 |
十八句 |
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濁子 |
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江戸櫻心かよはんいくしぐれ |
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薩陲の霜にかへりみる月 | 芭蕉 |
貝ひろひひろひゆく磯馴て | 嵐雪 |
醉ては人の肩にとりつく | 其角 |
けふの賀のいでおもしろや祖父が舞 | 翁 |
十 句 |
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松江 |
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しろかねに蛤をめせ霜夜の鐘 |
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一羽別るゝ千どり一群 | 翁 |
枯草にいよいよ松のみどりして | 曾良 |
田中の道のとをりくれ行 | 依々 |