倉田葛三



『衣更着集』

寛政7年(1795年)2月、西上人六百遠忌正当法要。花・桜の句を集める。

『衣更着集』(葛三編)刊。呉竹亭叙来序。

はつ桜月は水よりいつるかな
  羽 秋田 五明

さひしくも桜ちりこむ嬰児籠哉
  信 伊奈 伯先

行舟や苫に散いる磯さくら
鸞岡

朝山や顔ひやひやと桜ちる
三暁

船かけて月の桜を枕かな
里朝

朝の間は静におもふ桜かな
   種方 自徳

風情さや花のむかへの小炬火
   出 満原 其風
    (ママ)
松かけや日の色まさる遅さくら
左丈

月と日の間に桜の花あかり
   本庄 双烏

雨はれや行とて花にものわすれ
みつ

花山にひとり桜の夜明かな
   八幡山 凉化

花に虹日をくるはしてくれにけり
志考

花守か桜にたつる燈籠哉
蝶飛

人の来て火ともす迄の桜かな
   世良田 志塩

山はれて花と照る日のあゆみ哉
兎月

柴の戸や竹に桜に田三反
   吹上 喬駟

花二日のちは寝てこそあらまほし
   南部素卿
 (ママ)
人恋し烏も花の呼子鳥
  武八王子 星布

世はあらしされはそ花のはつ桜
喚之

人に夢雨夜の花のさわかしさ
  信 上田 如毛

夜の嵐かへつて花の咲もあり
麦二

里人の歯ひとはらや遅さくら
井々

朝風に襟垢寒しはつ桜
雲帯

夜桜やおなしからさる波の声
何鳥

花の夢さめてのあとの夜恋し
  上毛 草津 鷺白

山里や桜散迄のしきたしみ
  武 毛呂 碩布

咲花の浅魚は空のうつろひ歟
   妻沼 五渡

磯山の桜に眠る海鹿かな
角浪

月に雲扨しも花の散夜哉
   本宮 冥々

鼠くふ衣つゝくる花うれし
   白石 乙二

合器たゝく法師も花の日陰哉
  下総曽我野 雨塘

花の雲ことしも夢にくらす哉
   南部 一草

静かさのわれにうつりて花白し
鹿古

おもしろうてならぬうき世を桜かり
斗入

かた山に残る日かけの桜かな
  信 戸倉女 鳳秋

ふた木ともあらぬ御廟の桜かな
武曰

桜さく夜は夜とて風のふく
超悟

誰やらが桜にむかふ籠り堂
三圭

庭風呂に桜散こむ野寺かな
雨石

する墨のうつゝ桜にゆかむかな
里恭

雲はしりて空は桜のゆふへ哉
  武 飯旗 轍之
     (ママ)


花寒し清水岩もる夕月夜
  前花庵 雨什

   西行庵にて

雨降て科なき花となる日哉
  洛 闌更

花鳥の春見送るや大井川
蝶夢

人の胸にとく花咲ぬひかし山
重厚

散こゝろいたきて暁の桜かな
玉屑

かろかろと面そろへぬさくら花
  仙台 鉄船

おくるゝときくもうれしき桜哉
  名古屋 士朗

山は桜さくらはやまのかさりかな
  甲州藤田 可都里

やとり木の花くひおるなやま烏
  南部 平角

華にふるあなあやにくの霜の果
宗讃

   忘憂の酒は雫ものむ事をよくせす、
   遺悶の詩歌は文字つゝるへきさきく
   もなし、勝鹿の野夫白日を背にうけ
   て墨の濃なかれに足をあらふ

華のかけひとりをかしき物わすれ
成美

かへるさに松風きゝぬ花の山
巣兆

夜桜や世にあるものゝ迎馬
  信中戸倉 虎杖

咲花に見違る客の白髪かな
馬門

散かけのさそひかましき桜かな
   伊勢原 叙来

やむ事を得す散華の夕かな
宣頂

こかれてはいつも月なし桜花
葛三

ちらんとて咲や小礒のはつ桜
みち彦

曙の船まはさゝゝさくらかな
春鴻

   寛政七年きさらき望の日

於秋暮亭興行

うれしさのこふしてさふきさふき桜哉
葛三

草のはゝこに蝶の寝るくれ
丹人



むら雨の降か中なる秋の月
宣頂

やゝ寒狐何をなくらん
輝明



泣もせぬ涙にくちたからころも
蛙声

小春の椿梅もさきつゝ
馬門

ちろちろと流るゝ水を鳥のたつ
竹応

露の衾をなくしたる霄
叙来



おもひよる花の蔭より雲に鳥
春鴻

きさらき山とかきつけにける
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