建部涼袋

『伊香保山日記』


延享2年(1745年)

   梢涼しく藤おぼつかなき秩父山の春と背中あはせに、
   伊香保の浴ミおもひ立ながらまづ東武に趣くことありて

行春や松の青ミハ手もつかず

 う 月

   葛鼠法師いかほの入湯を送りて

  
脱捨のゆかたにも見る牡丹かな
   宗瑞

 鴻ノ巣にて

   かの地は風雨寒温気候ことごとくひとしからざれバ

 倉賀野

倉賀野宿脇本陣


   宿を立出れバ旭するどに浅間にむかつて浅ンの雪いと白し

うの華や野も飛び飛びに明しらミ

こゝろせよ笋迚も厚着時
   柳几

温泉の山をのがれ所や蠅ざかり
   秋瓜

   ひと日榛名山に詣ス。道すがら五月雨のあやめと読る沼を見る。
   風景いとよし。小富士と云やまあり。

時しらぬ山かと涼しとまり鷺

   是も病後の吟のよしにて

ほとゝぎす我も寝床の山を出る
   宗瑞

明日見よと闇に仕舞ふや梅の花
   柳居

うぐひすの一幅ものや園の竹
   秋瓜

水汲ミの世界別なり桃の華
   鳥酔

   猶月影に頭陀の口をひろげて
   是ハ一とせ浪花の浅生庵にて

いらいらとしてハほろつく月の雨
   野坡

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