俳 書

『はなのつと』(鹿古編)



寛政7年(1795年)、刊。長翠序。道彦跋。

金沢の俳人浅野鹿古が帰省する折の賀集。

鹿古は本名浅野不卜。高桑闌更の門人。月見坊。二世園亭。

 双烏
傘をひらきあふたり夜の花

胡蝶喰ひに飛(ぶ)かかハほり
   鹿古

春を追扇の箔の手について
   長翠

ほたんの窓に樟の小硯
   烏



蕪菜よき家四五軒の柳哉
   八幡山
 凉化

水仙に傘ほす俗の法師かな
 柴雨

(くさめ)して人這入なり冬の門
 志考

白雲の花にたまらす明てけり
   深谷
 素山

月にこゝろ二日の影も秋の松
   吹上
 喬駟

まツ風に噺けさるゝ冬の月
   出流原
 其風

かりふしに明す夜もあり杜鵑
 左丈

はつひはりこすやこさしや丘の松
   草津
 鷺白

うしろより前より淋し冬紅葉
   信中
 柳荘

大かたハ年々雨の皐月かな
 乕杖

かへしてる春の夕日や遠の山
 雲帯

礒風呂に船気わすれん夕時雨
 如毛

雉子の尾の草にもめたる暮春哉
 麦二

冬木立漁村ハくツむ夕なり
   越後
 南嶺

いくたひか炭焼けふり見るはかり
 以南

水鳥の羽ふすまうツや朝嵐
 桃路

行秋をたゝに蕪の広葉哉
   加賀
 馬仏

春の風潮かハきてより藻白し
   下サ
 雨塘

まきれぬもあハれ夜の戸不如帰
   
 星布

鶴のつかひ月にわかれて朧なり
   モトミヤ
 冥々

むしの音や夜の西瓜のすさましき
   甲州
 石牙

魂まつり宿を出れハはなはなし
 作良

既望や田ぬしか宿の火とり虫
 可都里

しら雪や寐しぬはかりに夜の人
 長翠

紅梅や雨ふきかけし上草履
 春鴻

行春や紫竹に実のなりて
 葛三

我宿ハさくら紅葉のひと木哉
 巣兆

夕月に笛吹峠越へにけり
 宗讃

花にくれてひとり按摩の独かな
 成美

見失ふはかり和けり浦の月
 完来

梅か香の我肩をこす日和かな
 烏明

業平にしくれの歌ハなかりけり
 みち彦

竹の子や身ハうツセミのからしあへ
 旧国

三条へ出てこそ見たれ初茄子
 蝶夢

(ふぐ)くはぬ人と不二見ぬ人愚也
 重厚

春雨や畳つめたき小町寺
 鹿古

嵯峨へ行人にあひけり秋のくれ
 二柳

花鳥もふるミに落ぬ九月尽
 升六

朝鷹の羽にうちかへす余寒哉
 玉屑

雨の木に身をうちつけてかんこ鳥
 羅城

ゆふかけや鴫のすれ行荻の声
 士朗

柳ありて人すむ流見ゆる哉
 一草

赤松のあらハなるより春の風
 斗入

山住やあたら桜に人きらひ
 闌更

   大乗寺詣途中

翁にそ蚊やつり草をならひける
 北枝

   さらしなにて

月のくもからすの啼ハ何郡
 万子

むめか香や分入里ハ牛の角
 句空

ひとりにも船出すころや川ちとり
 希因

いそかしや野分の空のよはひ星
 一笑

うらやまし浮世の北の山さくら
 翁

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