富処西馬

『花の雲』


富処西馬の芭蕉句碑建立記念句集。

田川鳳朗序、久米逸淵跋。

 天保13年(1842年)3月、富処西馬は高崎市の清水寺に芭蕉の句碑を建立。



正風宗師之碑

観音の甍ミやりつはなの雲

3月28日、清水寺で記念の句会を開催。

俳聖芭蕉翁の百五十回の遠忌に当れるにあひて、惺庵西馬兼て追福をいとなむに、社盟数十輩と議り、清水寺内に地を卜して一冢を築けり、碑面篆額の贈号は、故二条相公の霊屋に賜ふ所なり、今四山これに筆を抹、また高韻を出るものハ菱湖也、遙に聞、清水寺は上毛第一観音の霊場にして、洛の清水に景趣等しきと、言句も亦彼を取てこゝに移す、相当れるなるへくして、此道に遊ふの因をもて一条□来由を祭主の為にしるす

   維時天保十三年竜集壬寅三月

五品 多々良大内潤長

茲に亦上毛高崎の府、惺菴西馬ありて祭をまうく、其礼や厚々淳々、地を卜して恩報の碑を築き、払子を振て霊弔をさしまねく、同志雲の如く集り、香名しくれて叢根林葉をそゝく、風吟夕ニ一集札をなすといふ、こゝにおいてか一条をもとむ、よつて鳳朗腐毫を採て是か為に記誌す

    天保十三歳季春日

      天保壬寅三月二十八日於上毛清水寺興行
      一百五十回忌追福正式俳諧百韻

観音の甍みやりつ花の雲
  祖翁

残るかたなき春の日のかけ
   西馬



   碑前手向


はせを忌のひとふしなれや花のかけ
   碩布

めくりあひむかしのけふの花の雲
   逸渕

   信濃
花に只手を合はせたるはかりなり
   葛古

   武蔵
けふの我こゝろを啼や呼子鳥
   寄三

面影にたつや霞のかれ尾花
   青荷

   上毛
行春やこゝろを洗ふ椎の露
   竹煙

遠く見たほとにハもえぬ木の芽哉
   歩丈

      百五十年同昔日
      紅々緑々祖翁真

柳さへ花さへさそふ供養かな
   西馬

   武蔵
ある事のなくて過たし花に風
   南々

耻かしや花に来てさへ寐わすれし
   五渡

寐ところのかはるも嬉しはるの宵
   市月

   春之部


恵方ハと問婆とひとひよしの山
   鳳郎

目に見えて寒たけ立し柳かな
   見外

   夏之部


      卯 月

   江戸
鳴といふ木につひきかすほとゝきす
   松什

散を見てからすの逃る牡丹かな
   万古

   秋之部


   京
朝かほにあらく当るや稲の風
   梅室

一口に三夜をほめけり盆の月
   而后

   冬之部


      神無月

   江戸
はいはいと出るや小春の鱗雲
   護物

富処西馬に戻る