芭蕉翁甲斐塚

『冨士井の水』(三城編)



宝暦7年(1757年)、刊。抱山宇門瑟序。杉雪楼至芳跋。

 甲斐国冨士井(現:甲州市勝沼町藤井)の俳人梅馬が佯死して梅童と改めた折の追善集。

梅馬は俗名渡辺武右衛門。別号草々庵。代々名主を務める。

安永10年(1780年)3月4日、86歳で没。

   辞世

見定て戻らぬ旅そ花の空
   梅馬居士



   甲斐か根にて

 江戸
ほそ落の柿の音聞深山かな
   素堂

 伊丹
涼しさや富士もはたかに里の井戸
   鬼貫

   郡内を過て

 彦根
道はたにまゆほす嗅の暑かな
   許六

   自画讃

はまくりのいけるかひありとしの暮れ
   はせを

   画讃短冊 四季混雑

 イセ
やかて染る山をさらすやけふの月
   麦林

 東都
あらさひし琴に蓋して雪の松
   柳居

跡からはかけろふ燃る時雨かな
   宗瑞

木からしの石噛当る野すゑ哉
   至芳

   便面

踏れても踏れてもたゝ清水かな
   門瑟

山吹や花咲つめて水の中
   秋瓜

爰を切れかしこを挟め花御堂
   左明

横に行芦間の音や初時雨
   百卉

   文通難波より聞ゆ

初雁や芦火にそむう蜑か顔
   鳥酔

 伊勢
鴬や筆置音に飛て行
   麦浪

 尾州
うくひすの大事に震ふ初音かな
   白尼

 下総
行秋やこちらへ寒き鹿の尻
   弄船

 武州
いなつまや捨子のあたり立さらす
   柳几

 江戸
富士の雪里から消すや梅の花
   凉袋

   二見にて

 加州
行雁や蒔絵に兀る松の上
   希因

   須磨にて

 越中
麦秋も二日とはなし須磨の里
   麻父

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