白井鳥酔
『鳥酔居士句巣』
元文五申歳旦三斛庵初めて構営せし年也 |
いにしへのなら茶を今や花の春 汐くみの番ひはなるゝ霞かな かんこ鳥船は向ふの岸に居[る] |
戊寅(宝暦8年) |
住吉たからの市 月ひとつ宝拾ふや市の跡 |
くたけすに殺生石の霰かな かまくら光明寺にて 今は蒔く青砥か銭も十夜かな 遊行寺にて 手渡しの落葉を得たり法の場 最一景稲妻添ん瀬田の橋 蜻蛉や殺生石を屹度見る |
乙丑(延享2年)孟冬十五日夜、そこの国へ行脚の頃、晩成・雨竹両士にそゝなかされ、鎌倉の夜歩行して三章 |
大仏 |
白毫は舎に冴て星の中 |
光明寺 |
今はまく青砥の銭も十夜かな |
鶴ケ岡 |
仰向は高し霜夜の鶴か岡 |
丑ノ暮 |
月花を仕直す手間や年の[闇] |
延享三丙寅秋 先生吟ハ句集ヘ写ス |
老師同道洛中吟 日の岡仙行房か許をあるしとす。庭前の松に第す。 |
八月廿四日 |
渡り来る鳥の都や千本松 |
粟津義仲寺碑前 |
□□廿五日 |
雀さへ粟津慕ふや墓の秋 |
東山端の寮に遊ひて |
八月十日 |
丸山や膳に露打つ軒の木々 |
男山の麓に舎る 前書略 |
同十四日 |
まつ宵や放さるゝ鳥も人も寝す |
宇治橋上 |
同十五日 |
山吹の瀬を又咲やけふの月 |
黄檗禅院 |
仝十六日 |
白壁の雲奥深し秋の山 |
清水寺堂上 |
仝十六日夕 |
十六夜や三筋の瀧はへりもせす |
いせ奉納 |
同年夏 |
木下闇もなき代にあひぬ神路山 |
戊寅(宝暦8年) |
唐崎や杖を千もとの散松葉 |
全句数千百四十一洛陽記行除之年 此間他本ニ記ス七ケ年 明和三戌(ママ) |
似た僧のけふも立寄柳哉 |