大淀三千風
『松島眺望集』
松島 |
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松島の磯にむれゐる芦田(あしたづ)の |
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を(お)のがさまざま見へ(え)し千代哉 | 元輔 |
大坂 | |
松しまや大淀の浪に連枝の月(だね) | 西鶴 |
江戸 | |
武蔵野の月の若ばへ(え)や松嶌種(だね) | 桃青 |
江戸 | |
松しまの月さかせたらなん江戸ざくら | 言水 |
雄嶋 |
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秋の夜の月やをじまのあまのはら |
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あけがたちかき沖の釣舩 | 家隆 |
松嶌の左地をはなれし処に、十三間の橋あり。「藤咲かゝる松しまの橋」とよめる是也。丈(もつとも)境地無双の地也。骨堂あり、把不住軒とて雲居和尚禅堂あり。又松吟菴とて道心者の室あり。 |
福浦嶋 |
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竹によるこもや囀るふくらじま | 三千風 |
二子嶋 |
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新庄 |
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浪のへりに月や婬じて二子嶋 | 風流 |
末松山 |
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たびたびの千代を遙に君や見ん |
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末の松よりいきの松迄 | 相模 |
野田玉河 |
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みちのくの野田の玉河みわたせば |
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塩(汐)風こして氷る月かげ | 順徳院 |
塩釜に近し。此辺浮島・野中の清水・沖の石・奥の細道・轟の橋などいふ処あり、眺望の外なれば略す。 |
躑躅岡 |
とりつなげ玉田横野のはなれ駒 |
つゝじが岡にあせみ花咲 |
此歌は、河内国の玉田横野の題にあり。此処にも玉田横野と云処ありといへり、さだかにしれず。又鞭舘とて錦戸太郎国衡出張(でばり)城の跡也。今天神の社あり、無双の景地也。予独吟奉納十日万句の巻頭に |
御月ありかゝげ奉る一万灯 | みち風 |
又のとし、大矢数満座のよろこびの会に、 |
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<ミチバ> |
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とんたり梅三千羽のそやをゑ(え)たりやあふ(う) | 同 |
西行戻 長老坂のつゞき、松島目の下に見ゆる、よつて此名あり。 |
江戸 | |
御前句や西行もどり花の跡 | 言水 |
石巻 |
川中に大きなる岩あり、此かげ浪巴をなせり。此故に此名あり、則袖の渡り也。川はら五丁余、川上にまのゝかやはらあり。 |
袖渡 |
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泪川浅きせぞなきみちのくの |
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袖の渡に淵はあれども | 行家 |
澳井 |
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おきのゐて身をやくよりもかなしきは |
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都島べの別也けり | 小野小町 |
壺碑 此処、塩釜仙台の中間市川村といふ。国司屋敷の跡に、ぬのめ地の赤瓦あり、都のつとにし侍る。硯屏などに用る奇也。 |
去京一千五百里 |
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去蝦夷國界一百二十里 |
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多賀城 | 去常陸國界四百十二里 |
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去下野國界二百七十四里 |
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去靺鞨國界三千里 |
此城神亀元年歳次甲子按察使兼鎮守将 |
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軍従四位上勲四等大野朝臣東人之所置 |
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也天平寳字六年歳次壬寅参議東海東山 |
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節度使従四位上仁部省卿兼按察使鎮守 |
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将軍藤原恵美朝臣朝狩修造也 |
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(※「狩」は獣偏に「葛」) |
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天平寳字六年十二月一日 |
宮城野 則木ノ下に白山権現社あり、実は幡彦の明神といへり。三月三日木下祭、繁昌の市たつ。天平年中護国山国分寺二十四坊あり、真言宗也。 |
湖山飛散人大矢數寓言堂 |
大淀之三千風統焉 執筆加之 |