三浦柴居

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『安佐与母岐』(柴居編)

 天明3年(1783年)、寛眠が判者の許しを得て春暁庵柴居と改号した記念集。春眠窓蛙声序。

春暁菴のあるじハとしごろ蕉門に荷負す。乙艸あり。ゆへ(ゑ)に艸が旧名柴居を嗣、寛眠を捨てしをり坊ともよぶなるよし。すゝめて一派の判者たるべき事を春秋室中に談ず。
白雄
麻蓬相ともにあきの声きかん

こゆべき山や霧の曙
 柴居

月の色ひろ刃の斧に影とめて
 春鴻

下郎ながらも男なりけり
 呉水

松の木に花臍かけし薄みぞれ
 巨計

湯桶をさます風のひとふき
 此君



春暁菴のあるじハ我とおなじき俳諧してさうなき交りをなす事既十載。ひと日盧中の閑にいへらく、今蕉風波及の時にあへり。さちなる哉白雄に荷担してちから車のともにちからをうへん事をと、きくにすゞろたのもし。時に先師鳥酔のたまひたる、ワれに柴居の名あり。老ぬる身とゝもにくちなんもくちおし。これをつぐもの君ならでやハ。
乙艸
束柴ワかツを心月のあき

露の栞の艸むすぶ宿
 柴居



道のすたれたるにはあらねど中ごろ一変してやちまたの道さまざまに古道やがて艸生かくれんとせしを世にみたりよたりの先達ありて俳諧むかしに帰すのいまや、ともに見つべき元禄の月ともに見つべき元禄の花
柴居
かげは影こゝろもうつれ秋の水

輩はこぶ峰の椎柴
 蛙声

たぐふ夜のさゝらへおとここたへして
 知来

きたも南も雲なかりけり
 柴舎

啼過る鴾(とき)のてり羽の冬寒く
 酉居

貫木をろす門のゆふ霜
 馬門



うら口や浪うちかへし梅匂ふ
 春鴻

梅咲やひと夜どまりにまかり出
 古慊

   さぬきが国ワたらひせし頃

うめ咲て岩橋に歯朶の雫かな
   江戸
 百卉

おろおろと山鳥啼てうめのちる
 柴居

蘂に纏ひ梅がゝ長くたもちけり
  喝祖坊
 素輪

しらうめやあるじの女歌ふるす
 奥州盛岡
 素郷

   春暁菴に春色を愛す

雨後の柳ひめもす菴にも長居セリ
 蛙声

夜やかすむかた山里の月ふかき
  信戸倉
 可明

おぼろ気や女使のかへる月
   曽我
 馬門

捨沼や根芹くひきるゆふがらす
  信戸倉
 簾雨

春の雪消際竹にうち見たり
   栗庵
 似鳩

   戸塚の駅より鎌倉道に入て

なの花を見つゝ行野に嚏かな
  武吹上
 橋志

ながれ出しところはしらず春の水
   
 蝶夢

日に倦て春にはあかず松の風
  信戸倉
 丈馬

はる風に三日月の空ワかきかな
  信戸倉
 鳥奴

松風やほのかにまツのいかのぼり
 上毛植栗
 夜光

ゆふ風や骨もくだけず啼ひばり
 白雄

荒小田やいツをもぬけの田にし殻
  武飯能
 轍之

蜉蝣飛や焼野のあとのかぜたるミ
   江都
 成美

      花

薪うり桜の中を出しかな
 乙艸

日あらしや縄手八町さくらさく
   
 重厚

いも汁に八重山ぶきのながめ哉
   尾陽
 暁台

更衣葉守の神を称しけり
  武箕田
 文郷

雲かゝりくも出る月の不如帰
   仙台
 也寥

      夏   艸

きのふかけし簾巻べく牡丹咲
 蛙声

みじか夜に行ワたる苗の水かさ哉
 馬門

桴木にあはれ蝸牛の行方かな
  上穂町
 伯先

鳥の子を野水へうツす植女かな
 白雄

夏の夜や多かるものハ鳥の声
   加賀
 一菊

今朝の秋園守の翁とく起し
 柴居

真葛原あふツを秋のしるし哉
 武八王子
 星布

虫の音や月さしいるゝ書の小口
 白雄

帋の灯やむしにかざせバむしのけす
 蛙声

竹の林風のいなづま過るかな
 馬門

新月にそばうツ艸の庵かな
   
 几菫

帰らむと月にそむけバ影五尺
 沂風

賑はしやうき世のひとのたままつり
   播州
 青蘿

芭蕉葉に風ひと癖の夕かな
 呉水

大汐や芦ふしなミて舟のゆく
下総曽我野
 兎石

片里や普門品よむ秋のくれ
  信上田
 雲帯

夜の雨はじめ終をしぐれけり
 白雄

何鳥もなかで深山のしぐれけり
  信上田
 麦二

かた苫やし巻にかこむ舟子ども
 三机

片そぎや木の葉ちりうせてとがとがし
 相中豊田
 仙鳥

木枯の行方にけぶる真砂かな
 馬門

鳥飛やかたゆふぐれのかれやなぎ
 武八王子
 喚之

はやけふも扨は夜となる冬篭
   伊勢
 斗墨

冬ごもりこゝろごゝろの世なりけり
 相中酒匂
 大梁

寒月のひかりなミだとこぼれけり
 近江粟津
 臥央

あじろ守画んとすれバうごきけり
 越出雲崎
 以南

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