一茶の句



『八番日記』

   文政2年2月

木母寺の鐘に孝行かはづ哉

   文政2年5月

水売の今来た顔やあたご山

   文政2年6月

母馬が番して呑す清水哉

なでし子に二文が水を浴せけり

   文政2年9月

ことし米親と云字を拝みけり

   薬 師

大栗は猿の薬禮と見へにけり

   旅

秋風や磁石にあてる故郷山

さをしかやゑ(え)ひしてなめるけさの霜

   文政2年10月

雪の日や仏お竹の縄だすき

小松菜の一文束やけさの霜

   文政3年3月

迹供はかすみ引けり加賀の守

   文政3年6月

筏士の箸にからまる螢哉

   文政3年11月

横吹や猪首に着なす蒲頭巾

   文政4年3月

高井のや只一本の花の雲

   文政4年6月

明ぬ間に不二十ばかり上りけり

三尺の不二浅間菩薩かな

   文政4年8月

蘭のかや異国のやうに三ヶの月

   文政4年9月

   鹿 島

大なへ(ゐ)にびくともせぬや松の花

三味絃(線)で鴫を立たする潮来哉

都でも引はとらぬや丹波栗

   文政4年10月

芭蕉忌と申も歩きながら哉

はつ雪や雪駄ならして善光寺

   文政4年11月

   王子

御年初を申入けり狐穴

座敷から湯[に]飛入るや初時雨

秋風[に]ふいとむせたる峠かな

梅塵本『八番日記』

   文政2年

雀の子そこのけそこのけ御馬が通る

苦の娑婆や桜が咲ばさいたとて

   文政4年

   浅 草

涼しさや一またぎでも不二の山

   王 子

年始札まふ(まう)し入けり狐穴

   渋湯和泉亭にて

座敷から湯に飛込や初しぐれ

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