温泉のほとりに護法山示現寺がある。源翁禅師の開山である。源翁の古事は謡曲殺生石で多くの人に知られておる。宝物というのは源翁に関した物ばかりで、殺生石面を打った藜(あかざ)の杖を始め、その硯、香炉、足駄等くさぐさあった。源翁の墓、その坐禅石というものも現存しておる。昔は御朱印寺であったが、今は境内堂宇悉く大破に及んでおる。
楼門の側の銀杏が、地を覆うて真黄に落葉していた。
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山門を入ると左手に瓜生岩子の銅像があった。

瓜生岩子は明治時代の社会事業家である。
文政12年(1829年)2月15日、耶麻郡熱塩村(現:喜多方市)の母りえの実家に生まれた。
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今の熱塩温泉「山形屋」である。
会津熱塩温泉即景
遊園に囲ひし山の芒かな
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大正15年(1926年)8月28日、除幕式挙行。雨宮次郎作。
戦争で供出される。
昭和30年(1955年)、再建。佐藤恒三作。
東京の浅草公園に瓜生岩子の銅像がある。慈善家として聞えておる。岩子はこの熱塩の温泉のほとりで生れた。その生れた家は旧体のまま存しておる。小さい白壁の蔵作りで、表は店つきである。店には香水やシャボンのビラが下っておった。その主人というのは、岩子の実子であるそうな。五十左右の年輩で、かつて見た浅草公園の銅像の横幅の広い顔を想起せしめた。
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