その昔平維茂(たいらのこれもち)が独鈷山(とっこさん)に於て鹿狩のおり、侍女数人を連れ、紅葉狩をしている美女に呼び止められ酒を勧められた。
酔ってうたゝねをしていると夢の中に白山大権現が現われて「お前の相手をしている女は鬼女であるぞ」とお告げを受け維茂が驚いて目を覚ますと間一髪鬼女が維茂に襲いかゝろうとするところであった。維茂は剣をとって立ち向かいついに鬼女を討ちとったが、疲れがひどく急に体力が衰えて来た。そしてこの地にさしかゝると世にも不思議な音楽が聞こえ、七彩の虹が山の間に見えるので近寄ってみると岩の間から温泉がほとばしり出ていた。さっそくこの湯を浴びたところみるみるうちに体力が回復したので維茂はこゝに白山神社と寺を建立した。 |
元禄2年(1689年)7月27日(陽暦9月10日)、芭蕉は山中温泉を訪れ、8月6日(陽暦9月19日)まで「和泉屋」に逗留。 |
温泉に浴す。其功有明に次と云。 山中や菊はたおらぬ湯の匂
『奥の細道』 |