北原白秋文学碑


北原白秋文学碑〜落葉松

草津温泉から国道292号を下り、大津で国道144号へ。

羽尾尾で146号に入り、軽井沢に向かう。

星野温泉入口に北原白秋文学碑がある。


北原白秋文学碑


落葉松

      一

からまつの林を過ぎて、
からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。
たびゆくはさびしかりけり。

      二

からまつの林を出でて、
からまつの林に入りぬ。
からまつの林に入りて、
また細く道はつづけり。

      三

からまつの林の奥も
わが通る道はありけり。
霧雨のかかる道なり。
山風の通ふ道なり。

      四

からまつの林の道は
われのみか、ひともかよひぬ。
ほそぼそと通ふ道なり。
さびさびといそぐ道なり。

      五

からまつの林を過ぎて、
ゆゑしらず歩みひそめつ。
からまつはさびしかりけり、
からまつとささやきにけり。

      六
からまつの林を出でて、
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
からまつのまたそのうへに。

      七

からまつの林の雨は
さびしけどいよよしづけし。
かんこ鳥鳴けるのみなる。
からまつの濡るるのみなる。

      八

世の中よ、あはれなりけり。
常なけどうれしかりけり。
山川に山がはの音、
からまつにからまつのかぜ。

 北原白秋の名作落葉松の詩は、大正10年この地でうたったものて、水墨集には次の序文か記されている。

 落葉松の幽かなる、その風のこまかにさひしく物あはれなる、たた心より心へと傳ふへし。また知らむ その風はそのささやきは、また我か心の心のささやきなるを、讀者よ これらは聲に出して歌ふへききはのものにあらす、たた韻を韻とし、匂を匂とせよ。

 白秋をしのひ 白秋の詩業をたたへ、ここに北原白秋文学碑を建立する。

 大正10年(1921年)、星野温泉で自由教育夏季講習会が開かれ、山本鼎、北原白秋、島崎藤村、鈴木三重吉らが講師として参加。北原白秋は「落葉松」を発表。

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