旅のあれこれ文 学


『玉葉和歌集』

 鎌倉後期、第14番目の勅撰和歌集。20巻。京極為兼撰。和歌数約2,800首と勅撰和歌集中最大。

玉葉和歌集 巻第八

      旅 歌

   上總より上るとてくろどの濱といふ所に泊りて侍りけるに、月
   いとおもしろく侍りければ

菅原孝標朝臣女
まどろまじ今宵ならではいつか見んくろどの濱の秋のよの月

玉葉和歌集 巻第十五

      雜歌 二

   奈良の都荒れたるを見て

讀人しらず
世の中は常なきものと今ぞしる奈良の都のうつろふ見れば

   近江の荒れたる都を過ぐとてよみ侍りける

人 麿
ささ波の志賀のおほわた淀むとも昔の人にまた逢はめやも

           玉葉和歌集 巻第十八

      雜歌 五

   紀伊國にみゆき侍りける時むすび松を見てよみ侍りける

人 麿
後見んと君がむすべる岩代の小松がうれをまた見つるかな

玉葉和歌集 巻第十九

      釋 教

   山鳥の鳴くを聞きて

山鳥のほろほろと鳴く聲きけば父かとぞ思ふ母かとぞ思ふ

玉葉和歌集 巻第二十

      神祇歌

   走湯山に詣でてよみ侍りける歌の中に

伊豆の國山の南にいづる湯の早きは神のしるしなりけり


旅のあれこれ文 学に戻る