富安風生の句碑
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真間山弘法寺

市川の真間山弘法寺に富安風生の句碑がある。

真間山弘法寺祖師堂


 祖師堂の前に伏姫桜(ふせひめざくら)と呼ばれる樹齢推定400年の枝垂れ桜がある。

 昭和12年(1637年)4月3日、高浜虚子は武蔵野探勝会の吟行で真間山弘法寺を訪れる。池内たけし・富安風生等同行。

真間山弘法寺の山門を徐に這入らうとしたら

「たけしお前今日の吟行を書いて見てはどうだい」

と虚子先生が云はれた。私は即座に

「書かせて貰ひませう」

と返答した。

 そこで更に大きく眼を見張つて境内を見直したら一本の枝垂桜が美しく咲いてゐた。先づその枝垂桜の下に歩み寄つて花を見上げた刹那去年は漸く病床に横たはつてゐて手鏡をかざして遠くの花を映して見たことを想ふと、かうして花の下に来てゐられることがとてもとても嬉しかつた。何に例へやうもなく嬉しかつた。虚子先生もゐられる。赤星さんもゐる。後から後からと山門をくゞつては花の下に歩み寄つて来る句ともがらは賑はしかつた。今日は風もなく至つて長閑である。葛飾の野も霞んでゐる。遠く東京の空も花ぐもりである。

『武蔵野探勝』(真間山の花)

富安風生の句碑は伏姫桜の下にある。


まさをなる空よりしだれざくらかな

『松籟』(昭和12年)に収録の句。

昭和45年(1970年)4月5日に句碑除幕式があった。

水原秋桜子は、その日の日記に句碑のことを次のように書いている。

 句碑は実に見事なもの、大きさも適当で、彫金の板を石にはめ込んである。錆銅のものでさえ少ないのだから、彫金はほかに類例はないだろうと思う。碑のうしろには、句に詠まれた枝垂桜があって、毎年いま頃は開花するのだそうだが、まだ蕾は固い様子である。風生さんの句は、すらりとよくわかって、好い句である。字もすっかり手に入って、きれいだ。桜が咲くと、うまい具合に枝影が碑面にさすことだろう。来年は花季に来て見たいと思う。

秋桜子78歳の時である。

   真間山弘法寺に成りし風生句碑に寄せて

かつしかや月一片の花の句碑

『緑雲』

全国で32番目の風生句碑である。

   真間さくら句碑 二句

しだれざくらと書き流したる意(こころ)かな

しだれ咲く花のこころに随はむ

   真間・さくら句碑、二周年記念句会 三句

こころこめしだれざくらと仮名でかく

一切を容れてしだるる桜かな

夜は星の空よりしだれざくらかな

『年の花』

私が訪れたのは3月中旬のことで、やはりまだ早かった。

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